女性のエンパワーメントをはかるため、世界貿易機関（WTO）と国際連合の合同機関である国際貿易センター（International Trade Centre；以下、ITC）によって立ち上げられたプロジェクト「Ethical Fashion Initiative（エシカル・ファッション・イニシアチブ；以下、EFI）」。EFIは、「NOT CHARITY, JUST WORK」をスローガンに、金銭的な支援ではなく、経済的な自立を目標とした支援を行っています。ITCの指導によるトレーニングを通じて、アフリカなどのもっとも恵まれない地域の人々が技術を身につけ、公正な賃金により、自分達の力によって貧困から抜け出すことを目指しています。
「Chan Luu」がケニアを訪問した際。「Chan Luu」はマサイ族とのコラボでビーズのラップブレスレットを作った。
立ち上げ以来、EFIは世界の名だたるラグジュアリーブランドのデザイナーと組み、アフリカ各国と南米・ハイチの女性たちに雇用を生み出してきた。「MARNI」、「Vivienne Westwood」、「Stella McCartney」、「Stella Jean」、「Chan Luu」、「Carmina Campus」、「sass & bide」……名前を挙げればキリがない。日本では「UNITED ARROWS」による「TÉGÊ UNITED ARROWS」が話題になった。いまや、EFIは世界に職人のネットワークを有しており、高度な技術を持つ「手仕事工房」の総合ハブを実現している。
同時に、ファッション業界の抱える問題について、映画を通じた啓蒙にも積極的に取り組んでいる。「ファッション映画のカンヌ」と名高いLa Jolla International Fashion Film Festival（LJIFFF）とパートナーシップを組み、ベスト・ドキュメンタリー部門を立ち上げ、サスティナブルなファッションのあり方を伝える試みを応援している。
こうした活動を行うEFIのボードメンバー・Simone Ciprianiに、EFIの映画での取り組みについて尋ねた。
（左）Simone Cipriani。ファッションフィルムネットワークのガラ・パーティにて。
―― 「プラダを着た悪魔」に「The Neon Demon（原題）」……ファッション業界を批判的に描く映画も数多く発表されています。こうした映画は、人々のファッションに対する見方を変えてきていると思いますか？
私がいま必要だと思う映画は、ファッションが社会を変える原動力となっていることを示す映画です。
―― ファッションと映画が協力する重要性とは？
ファッションの裏にある問題に、人々が目を向けるきっかけを作れることですね。
―― EFIがファッションと映画をつないだ最初のプロジェクトはなんでしたか？
私たちは、メッセージを伝えるのに動画を多く製作します。初めて作ったのは、イタリア生協（Coop Italia）とコラボしてアフリカでバッグを作ったときでした。ケニアとウガンダにある9つのコミュニティと、それぞれ1種類ずつ、9種類のトートバッグを作ったのですが、その一つひとつに1分程度の動画を作りました。あれから私たちの動画製作技術もだいぶ向上しましたが、これが私たちのスタートです！
―― 「ファッション映画のカンヌ」と呼ばれるLa Jolla International Fashion Film Festivalと協業に至った経緯は？
本質的で健康だと思ったからです。この映画祭は、ファッションと映画が手を取り合って、ともにファッションのあり方を変えようとしています。映画祭の創設者・Fred Sweetは、非常に真摯に取り組んでいます。
―― 2012年、EFIはプログラムを拡大して、より多くのデザイナーが世界中の職人たちと協業できるようにしました。映画でもその拡大路線を？
できたら素晴らしいですよね。もちろんそうしたいです！
―― 映画に関して、EFIの今後の予定は？
ここ半年、イタリアの動画アーティスト・Yuri Ancaraniといっしょにプロジェクトをしており、私たちのパートナーのいるハイチを取り上げてもらいました。9月に詳細を発表するので、楽しみにしていてください。
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