【連載】アーヤ藍の旅の『芽』【全6回】

“日本”は好きですか? 自分の国と文化への愛情を育むということ

A Picture of $name アーヤ藍 2017. 2. 24

日本が好きですか?

……と聞かれたら、あなたはすぐに答えられますか? そして、その答えは「Yes」ですか?

私は中学生のとき、「将来日本を出て行きたい」と国語の作文で書いた記憶があります。あれから10年以上が経ち、いろんな外国に訪れた後のいまも、即座に心から「Yes」と頷けるかは分かりません。今回は、そんな私にとって、印象深いメキシコでのエピソードをご紹介します。

2015年秋、中南米の旅に出た私は、日本の友人からメキシコ人のケスを紹介してもらい、首都のメキシコシティーからバスで1時間ほどのトルーカ市を訪れました。

ケスの家から見える トルーカ市の眺め。

ケスの家から見えるトルーカ市の眺め。


ちょうど「死者の日」と呼ばれる、日本でいうところのお盆のような日が近かったため、トルーカの街はガイコツのオーナメントや食べものでいっぱい!

ケスは、トルーカからさらに車で1時間ほど離れたヴィクトリア村という地方の高校で英語を教えています。ケスを訪れるにあたり、彼女から「私が教えている学校で、日本についてプレゼンテーションをしてくれないか?」という提案を受けました。

というのも、彼女が教えている学校はメキシコでもかなり田舎にあり、これまでに日本人はおろか、外国人に会ったことがない子どもたちが少なくないというのです。そして、生涯メキシコから一度も出ない子も多いと思う、とのこと。

そんな子どもたちに、英語でコミュニケーションをとる楽しさを少しでも感じてもらいたい、海外のことについて直接その国の人から話を聞く機会をもってほしい、ということでした。

もちろん喜んで引き受け、トルーカから車で1時間強かけてヴィクトリア村に向かいました。

首都のメキシコシティーは東京と変わらぬ大都会で、トルーカ市に移動しただけでも「地方」に来た感じがしていましたが、ヴィクトリア村に近づくにつれ、あたり一面とうもろこし畑が広がり、牛や羊のほうが人の数より多いのではないかと思うような風景に変わっていきました。

途中からは、道路のコンクリート舗装もなくなり、凸凹の土がむき出しの道をガタガタ揺られながら進みます。

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到着したのは、全校生徒70人ほどの小ぢんまりとした1階建ての学校。

奥に見える薄いグリーンの建物が訪れた学校。

奥に見える薄いグリーンの建物が訪れた学校。

村の中だけで暮らしている子が大半のため、彼らにとって、私は初めて出会う「日本人」。「外国人」になれたことがすごく光栄なことだと思うと同時に、小さなプレッシャーも感じました。

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そうした中、日本の衣食文化などについてを紹介。一番関心をひいていたのは食べ物のコーナーでした(笑)。食は万国共通、みんな興味を持つものなのかもしれません。

さて驚きだったのは、発表後の質疑応答で出てきた質問。

「メキシコが好き?」「メキシコの食べものはどれが一番好き?」「メキシコに住みたいと思う?」など、“自分の国を外国の人がどう感じたか?”についてがほとんどでした。

私が、メキシコのことを住みたいと思うくらい好きになったと伝えると、「そうだろう、そうだろう」という感じで、みんな満足気な笑みを浮かべていました。逆に私から「みんなはメキシコが好き?」と尋ねたところ、全員即座に大きく頷いてくれました。

生徒のみんなの手作り刺繍タペストリーをいただきました!

生徒のみんなの手作り刺繍タペストリーをいただきました!

発表後には、手作りのタペストリーとメキシコのお菓子をカゴいっぱいにプレゼントしてもらい、さらに、生徒さん手作りのメキシコ料理もご馳走になりました。デザートのリンゴは「私たちが今朝、近所で採ってきたものなの!」と、胸を張って渡してくれました。

(左)発表後には、女の子たち手作りのメキシコ料理をごちそうになりました。(右)近所で朝採ってきたというデザートのリンゴ!

ケスから聞いた話では、この学校に通う子どもたちは、家庭もあまり裕福ではなく、毎日何時間も歩いて通っている子や、高校以上の学校に通わない子も多いのだそう。それでも、自分の国や自分のいまの環境に、自信やプライドを持っていることが、彼らのキラキラした目や、優しい笑顔から、強く伝わってきました。

それはもしかしたら、彼らの日常にメキシコの文化が根ざし、身近だからこそ、なのかもしれません。自分たちで食材を育て、家畜も飼育し、料理を作り、自然なままの風景に囲まれ……、だからこそ自負を持てる。都市部に住み、自分自身の手からその土地の「オリジナル」なものが遠ざかれば、その地の“パワー”や魅力も分からなくなっていくはずです。

また、「愛国」というとどこか排他的な印象がありますが、実は、自分の国や文化への愛情を育むには、外の人との交流こそが大きな役割を果たすのではないかとも、この経験を経てあらためて思いました。

日本のことが好きかどうか聞かれたら、すぐには頷けなかったとしても、海外の友人が日本食を喜んで食べてくれたり、和物の雑貨を素敵だと褒めてくれたとき、小さな“誇り”を感じた経験がある人は少なくないと思います。相手にもっと伝えるために、自分自身が学ばなければと感じたことがある人も多いはず……。

足元を見つめながら、でも外に開いていく。そんな積み重ねの中に、ふるさとへの愛情は自然に芽生え、育まれていくのではないでしょうか。

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