【連載】過去・未来・空間……全てをつなげる araisaraインタビュー【全3回】

「全てのアクションが連鎖するその一瞬」 araisara interview #03

2012. 7. 31

【デザイナー:荒井沙羅】
中国北京出身。1997年中国でデザイナーデビュー後、日本に活動の拠点を移す。2008年新しい視点から東洋の伝統文化とファッションのつながりを表現するプレタポルテライン「araisara」を立ち上げ、09-10 A/W より東京JFWにてコレクション発表。13SSからはパリコレクションに発表の舞台を移す。ブランドのコンセプトは『古き良きものを現代にそして未来へ……』。

「響」
流れる空気
響く音
伝わる声
伝い広がる意識の波
人から物へ
物から人へ
やがて宿る人の思い
止まる事のない命の鼓動
鳴り続ける鼓動の響き
響きから始まる命の鼓動

今回は、2回目の東京コレクション、2010 SSコレクション「響(ひびき)」についてお話します。

このコレクションには、世の中のことは、何かアクションがあるから誰かに広がっていく。逆に、何かアクションしなければ広がらない。だからアクションしましょう、というメッセージをこめました。

そう思ったのは、ずっと私の物を縫ってくれた縫い子さん「おばあちゃん」が亡くなってからでした。「おばあちゃん」は、オートクチュールのときから縫ってくれている人で、お客様のオーダー品も高級メーカーの企画品も全てサンプルを縫ってくれ、デビューコレクションの物も、大半を彼女が縫い上げたものがいくつかありました。「おばあちゃん」は、デビューコレクションのショーを見た後に亡くなったのですが、彼女の死を経て感じた『人が生きることで残される気持ち』というところからきたものです。

「おばあちゃん」が縫ったビスチェ(araisara 2009 AW ‘時’)

彼女は17年もの間私の服を縫ってくれましたが、完成した品は必ず手渡しで納品にきてくれました。彼女は一度も郵送しなかったのです。彼女お客様に対する気持ちはとても真摯で、オーダー品である服を人に預けられなかったのでしょう。作品をお願いするときも、私のアトリエに来て、話をし、指示を目の前で受けて、仕様書をいっしょ見て……と、必ず直接受け取りに来てくれました。

「おばあちゃん」はふだんアトリエで作業をしていて、外にあまり出かけませんでしたので、アトリエに来るときにはいつも帽子をかぶってお洒落して会いに来てくれました。

「いつも作業を家でしているから、MEIさんに会いに行くのがすごく楽しみなんですよ」。

彼女はそう言っていましたが、でもきっとそれだけではなかったのだと思います。彼女にとって、お客さまの品を納めに行くというのはすごく重要なこと。だからお洒落して、大事に持って届けに行く。直接渡すまでが彼女の作品づくりだったのです。

araisara toki obaachan 4

「おばあちゃん」が縫ったコートドレス(araisara 2009 AW ‘時’)

「おばあちゃん」は、デビューコレクションの4~5年前に癌になりました。それでも、携わりたいという申し出があり、私も少なめながらもお願いすることにしました。作り終わって、デビューコレクションを見に来てくれましたが、終わった後に興奮してすぐ電話をくれたのです。聞けば、会場で彼女の周りに座ったお客さまが全員、彼女が縫ったオーダー品を着ていたというのですから。

『あのとき縫った○○のパープルのジャケットの人が私の左にいて、あのとき縫った△△色のワンピースの人が私の右にいて、前に座った人のスーツも私の縫ったもので……』と、「おばあちゃん」は全部覚えていたのでした。

デビューコレクションが終わってから「おばあちゃん」は他界しましたが、私は「おばあちゃん」の最期に立ち会うことができませんでした。『いつもおめかしして会いに行っていたから、全部焼かれてきれいな写真になったときじゃないとデザイナーに顔向けできない。きれいな写真飾ったときに彼女に伝えて』と、彼女は私に病院を教えないよう、ご家族に言っていたからです。

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