両足義足でハイヒールを履くという選択 / アーティスト・片山真理さん

若手アーティストの発掘・育成を目的に開催される展覧会・アートアワード東京丸の内。若手アーティストの登竜門としてすっかり知られた存在で、今年で6回目を迎えました。2012年のグランプリは片山真理さん(24)。両足とも脛骨欠損という、主幹を成す太い骨がない病気を持って生まれ、9歳のときに切断。以来、両足が義足のアーティストです。

ファッションのこと、10代の頃のこと

「in my room」(2009年)

『昔からお洒落が好きなのもありましたけど、10代の頃はめちゃくちゃいじめられっ子だったんですよ。それで、意思表示のために義足に絵を描いたり義足をレインボーとかカラフルにしたりしていたのがきっかけで、ファッションに興味を持つようになりました。いじめっ子たちは、私の言葉を何一つ聞こうとしない。じゃあ、言葉が通じないなら見た目で表現するしかない、と。それでちょっとわけの分からない格好して、真緑に髪を染めたり眉毛を全部剃ったり……超ミニスカートにして義足に絵を描いたりしていました。それはもう、めちゃくちゃ怒られました(笑)。

『地元・群馬にいる頃は、雑誌の読者モデルの人たちが着ているものをインターネットで検索して、近くの小売店で取り扱っていれば母親と見に行っていました。それでも、義足のこともありますけど、その頃は太っていたので……体型が合わなくてなかなか買えませんでしたね。義足でぴったりしたものを履くと、膝を曲げてから再度立ち上がるときに、生地が膝の裏のところで詰まって上がってきちゃうんですね。昔はそういうのが嫌で嫌で仕方なかったんですよ。そういうときには、ユニクロとかで大きいサイズで似たようなものを買って、自分でサイズを直して、ペイントや絵を描いたりして着ていました。

「right legs」(2012年)

「right legs」(2012年)

「pink legs」(2009年)

「pink legs」(2009年)

『ファッションがどれだけ好きでもハイヒールは履けないし、レギンスやスキニーパンツみたいに足のラインが出てこそかっこいい服を着てもどこか垢抜けない。10代の頃のファッションに掛けるエネルギーは尋常じゃなかったです。シルエットとか、すべてが自分の思いどおりにならないと気が済まなかったんでしょうね。無意識に抑圧されていたものが溢れてあふれてしかたなかったのか。自己主張がとにかく激しかったんだと思います。

『幸い、裁縫がすごい好き……というか、小さい頃からミシンの音を聞いて、当たり前に「縫う」ことがある環境で育ったので、「自分に合う服がないんだったら自分で作ればいい」というのはしごく当たり前のことでした。いまは、Tシャツにジーンズでもぜんぜん気にならなくなりましたけどね』。

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