エストニア発――デザイナーとつながる次世代型Re・ファッションプラットフォーム「Trash to Trend」

A Picture of $name Mie MANABE 2012. 4. 16

地域の資源でグローバルなデザインを

上の写真のかっこいい洋服たち――実は、全て捨てられるはずだった衣料からできているのです! 洋服の製造過程で余った布切れや、売れ残りで処分される運命の洋服の生地を材料とし、クリエイティブなファッションを世界に発信するプラットフォーム、「Trash to Trend」。これは2005年からサステイナブルファッションを提唱するエストニア人デザイナー・Reet Ausによって立ち上げられたもので、主に3つの特徴があります。

1. 余り布マップとデータベースが閲覧可能

余りものの生地がどこで手に入るのかを記したマップ「waste mapping」と、それぞれの生地の種類、量がデータ化され、その場所にそのままコンタクトできるようになっています。

2. デザインテクニックの提供

余った布をファッションデザインの力でよみがえらせるために、デザイナーの洋服のパターンなど、プロのテクニックを提供しています。

3. さまざまな機能を果たす仲介役

相互的なプラットフォームとして、生地の提供者と、デザイナー、顧客の間で直接やりとりができるのもこのプラットフォームの魅力。これにより、透明性のあるサプライチェーンが作られ、多くの洋服が新たに命を吹き返すのです。また、このプラットフォームを使うことでさまざまな立場の人々がアップサイクルに向けたアプローチを行うことができます。

個人(一般消費者)の場合

個人での製法(DIY)と併用してこのプラットフォームを利用すれば、デザイナーが描いたパターンを使うことができ、より専門的な技術を習得することができます。自分で洋服を作る技術が身につけば、新しい商品を買う機会が減ります。究極のゴールは、デジタルパターンや縫製の説明書を使って、自分自身の洋服を材料として新しい商品を製作することだそう。

個人のデザイナー・小規模なアトリエの場合

いままで「アップサイクル」という手法は、主に独特なデザインの洋服を手がける個人のデザイナーが行うものでした。一つずつ違ったデザインの洋服をアップサイクルするのには、それだけ洋服のコストも時間もかかりますが、埋立地行きの布切れの量が大幅に減るのと同時に、原料の使用の縮小につながります。

「Trash to Trend」の「余り布データベース」は、地方のアトリエと顧客の架け橋ともなっています。顧客は、さまざまな種類のベーシックな原料とデザインから気に入ったものを選び、専門的なフィッティングによってデザインをカスタムし、現地での製作を依頼します。顧客に製作段階から関わってもらうことで、デザイナーとの個人的な関係が構築され、着る人にとって洋服が“より価値あるもの”に生まれ変わります。こうして時間をかけて完成した洋服には、なんともいえない愛着が感じられ、長い間大事にされる1枚になるのです。

マスプロダクション(アパレルメーカー・ブランド)の場合

大規模な企業は、主要な製品用の布をカットする際に出る切れ端を使って、副次的な製品を同時にデザインします。このような“ゴミ0製造システム”が大規模な企業で採用されることによって、処分されるはずの布切れが生まれ変わり、大幅なゴミの削減につながります。

このサイトは2011年にオープンし、2011年現在参加しているのは5ブランド。中には、エストニアの芸術大学生徒たちがデザインするブランド「Hula 10」もあり、若いエネルギーも注ぎ込まれています。現在、エストニアを拠点とする慈善団体、大学、ジーンズメーカー「G-star Raw」 、EU開発基金までもが「Trash to Trend」のパートナーとしてさまざまな援助をしています。

日本での繊維製品の排気量は年間で約200万トン、その90%近くが廃棄処理されている(*Source)という現状を考えると、このプラットフォームはぜひ日本でも取り入れたいモデル。「余り布マップ」をデータ化するとは、なんとも斬新なシステムですよね。デザイナー・企業・消費者が双方に影響し合い、新たなファッションの方向性を考える「場」のあり方を、リトアニアから学ぶ筆者なのでした。

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