【連載】Design with People 〜人を巻き込むデザイン

人を巻き込むデザイン 〜共同デザインへのチャレンジ

10年近くにわたり、テキスタイルを用いたものづくりに取り組んできたという、デンマーク出身のテキスタイルデザイナー・Rosa Tolnov Clausen(ローサ・トルノフ・クローセン)さん。ヨーロッパという地域が育んできた技術や強み――それを理解して深い洞察を得るために、これまでさまざまな取り組みを行ってきた彼女の目標は、デザイナーじゃないいろんな人を巻き込んだインタラクティブな織物づくり。

そんなローサさんが「Design with People(人といっしょにデザインする)」をテーマに、ヨーロッパでのさまざまな取り組みを紹介します。

私は、デザイナーではない、多くの人々といっしょにデザインすることが大好き。どうやって人を巻き込むのかということを常々考えていますが、それはなぜかというと、土地に受け継がれてきた伝統や技術が、いろんな人の感性が混じり合うことで、新しい関係性を持ちながら保たれていくからです。

初回の今回は自己紹介を兼ねて、私のこれまでのプロジェクトをご紹介します。

Photography: Carsten Siden

Photography: Carsten Siden

人が関わるフックを自然と組み込めるよう、しくみをデザインすること。プロジェクトに関わってくださった方に、布が持つストーリーを感じてもらえたり、身の回りの布を使った製品に親しみを感じてもらえるようになればと思っています。

HANDS ON WOVEN

デンマークのテキスタイル工場は、もう少ししか残っていません。その数少ない工場のうち、手織りでテキスタイルを作っている工房が「Work by the Blind(目が見えない人による手仕事)」。その名のとおり、盲目または弱視の方々を職人として雇用しています。私は2013年から彼らとともにプロジェクトを行っています。

最初は、コンテンポラリーなデザインの商品を彼らに織ってもらうということから始まりました。でもデザインをしていく中で、あるアイディアに取り憑かれていきました ――織り職人さんたちがデザインにも関わってくれたらどうなるだろう?

そこで織り手さんたちとじっくり話し合いながら、生地を触ったとき感覚を生かしたツールキットを作りました。このツールキットでは、目が見えなくても触ったときの感触で、3つ好きなものを選ぶことができるしくみになっています。基本的な織りの構造、装飾、色/素材の組み合わせ、の3つです。織り手さんたちは、織りながらそれを好きに組み合わせることができます。よって、織り手さんたちは、商品の作り手でありながら共同デザイナーにもなるのです。

ツールキットを試してみたとき印象に残ったのは、商品づくりにいっそう積極的・主体的になってくれたことでした。ただ作るだけではなくデザインにも関わったことで、わくわくする気持ちも「関わっている感」も強まったのでしょう。おかげでユニークで美しいテキスタイルが生まれました。そのテキスタイルは、クッションに仕立てています。


Photography: Carsten Siden

この体験は、私にとっても新しい発見でした。私がデザインしたのは、テキスタイル商品だけでなかったのです。織り手さんたちにも新しい「プロセス」をデザインしたのです。それが「HANDS ON WOVEN(手を使って織る)」です。

EVERYTHING I KNOW ABOUT KASURI

2013年、私は京都に滞在し、川島テキスタイルスクールで日本の織りである「絣(かすり)」について学びました。滞在中、文化が異なれば、それによって培われる美意識も大きく変わるのだと感じました。そして、ものづくりは人と人の交流を生むフレームワークにもなるのだと感じました。

「EVERYTHING I KNOW ABOUT KASURI(私が絣について知っている全てのこと)」というのはワークショップで、日本で体験したことを自分の方法で表現したものです。絣を織るという可能性を模索したものであり、また織り上げる時間と過程の中で、人と人の交流を作り出すことを目指したものでした。

ワークショップに参加してくれたのは、経歴の全く異なる10名の方々。京都で行いました。

ws13_o

Photography: Kohei Usuda

参加者にはそれぞれ絣の経糸、針、そして3つの緯糸を渡し、各々織ってもらいます。3時間の間でしたが、みなさん慣れていくうちにどんどん集中していきました。そして、しだいに参加者どうしがおしゃべりするようになり、部屋には笑いが溢れるようになりました。

ものづくりは、人と人を結びつける役割も果たせるのだと、感じた体験でした。

CAN A ROOM BE A LOOM?

2013年秋、デンマークのKolding School of Designという学校から、「もし自由に使える出荷用コンテナがあったら?」というお題をいただきました。

実際に出荷用コンテナは7つ並べられ、ミラノのFuori Saloneで2014年春に展示されることになっていました。

当時は日本から戻ってきたばかりだったので、インスピレーションはたっぷり。すぐに、空間を使って「織り」について注目してもらえるようなものを作りたいと思いました。

そこで、見てくださる方をコンテナの中に招き入れ、部屋で織ってもらおうと考えました。ただし、織り機を置くのではなく部屋自体を織り機にしてしまおう(CAN A ROOM BE A LOOM?)、と。そうすれば、織りを身近に感じてもらえますし、いっしょに一つのものを作ることができると考えたのです。

ふだん、織りの世界は小さいミクロな世界です。空間そのものを織り機にしてしまえば、織りの世界を拡大して見ることができます。コンテナに足を踏み入れたとたん、織りの世界が目いっぱい広がるので、否応がなしに織りというものを身近に感じるでしょう。

原始的な織機に着想を得て、コンテナを巨大な織り機に仕立てました。50メートルの生地を切り、それらを天井から垂らします。コンテナに入ってきた人は、好みの緯糸を経糸に通します。合計3,000の経糸を用意しましたが、毎日600ずつ経糸を変え、みなさんが緯糸を通せるようにしました。デンマークのテキスタイル企業・Kvadratがサポートしてくれました。


Photography: Mette Højgaard Nielsen

Photography: Mette Højgaard Nielsen

Fuori Saloneが終わる頃には、およそ2,500〜3,000の人が参加してくれました。そして5枚の大きなテキスタイルができあがりました。その5日間の様子はタイム・ラプスカメラで撮影し、できるまでの工程が見られるようにしました。

このようなプロジェクトを進めてきましたが、Fragmentsでは、スカンジナビア・デザインの最前線、特にものづくりに関する行動・社会デザインについて執筆していきたいと思っています。私の冒険が、みなさんにとってもすばらしい冒険になることを祈って。

この記事のキーワード

Keywords

Sponsored Link
この連載のほかの記事

Backnumber

ほかにも連載

Find More Series