石井光太新刊「浮浪児1945-―戦争が生んだ子供たち―」

2014. 8. 12

終戦直後、焼け跡に取り残された多くの戦災孤児たちは、どこへ消えたのか?ーーノンフィクション作家・石井光太の新作で、戦争が生み出したものを見つめ直す1冊が発売となりました。

IMAGE: Courtesy of 石井光太

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1945年の終戦直後、焼け跡となった東京は、身寄りのない子どもたちで溢れていたといいますーーその数、全国で12万人以上。復興とともに街がきれいになるにつれ、歴史から「消え去った」彼らはどこへ? 残された資料と当事者の証言から上野を中心に現在までを追った1冊。著者の石井光太氏は、同書刊行に当たり、次のようにメッセージを発信しています。

太平洋戦争では、10万人以上の親を失った孤児が生まれました。彼らは焼け野原となった路上に放り出され、「浮浪児」と呼ばれて、戦後の飢餓の時代を生き抜くことになります。上野駅の地下道で寒さをしのぐ浮浪者だけでも5000人にもなり、犬や猫を殺して食べ、靴みがきや新聞売りをし金を稼ぎ、闇市でヤクザやパンパンの仕事を手伝って食べ物をもらいました。むろん、その間には餓死や自殺で命を失った子供も大勢いました。そうして一部の子供たちはなんとか地を這うような暮らしをして生き抜きます。

しかしながら、こうした戦争の記録は、戦後いっさい歴史から消し去られてきました。浮浪児の経験のある子供の数は十万人を超すといわれています。しかし、国も、メディアも、研究者も、文学者も特攻隊やパンパンや被爆者については膨大な記録を作り上げたものの、浮浪児の記録だけは残さなかったのです。それゆえ、六十九年間、浮浪児は歴史から事実上なきものとされてきました。

そんなことを受け、私は「歴史から消された浮浪児」の記録を掘り起こすことを決めました。そして2009年からあしかけ5年にわたって元浮浪児たちの足跡を追い、数十人の元浮浪児、数十人の関係者を見つけ出し、インタビューを行って記憶を一つ一つ掘り起こしていったのです。

『浮浪児1945-』は、浮浪児たちが路上でいかにして暮らしたのかという<飢餓を生きた記憶>であり、そこからつづく69年間の人生です。ある浮浪児は殺人を犯して死刑囚となり、ある浮浪児は企業の社長となって数十億円を動かく人物となり、ある浮浪児は記憶喪失となって自分が何者なのかわからぬまま生き、ある浮浪児はアメリカへ渡って移民として生きることを選びました。

戦争は、子供たちの運命を以下に変えたのか。そして、子供たちはその運命の中をいかにして生き、今どのような思いでこの日本を見ているのか。来年終戦70年を迎える今、歴史から消された子供たちの記録から、日本の「もう一つの歴史」をお考えいただければ幸いです。

もうすぐ69回目の終戦記念日。戦争が残すものを、考えてみませんか?

「浮浪児1945-―戦争が生んだ子供たち―」

著者:石井光太
価格:1,620円(定価)
出版社: 新潮社
判型 / ページ数:四六判 / 286ページ
ISBN:978-4-10-305455-9

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