【デザイナー寄稿・第3回】シンガポール発「ETRICAN」の工場選び、工場とのお付き合いの仕方

2014. 3. 24

アジアでも急速に伸びつつあるエシカルなファッション。その実のところはどうなのでしょうか? シンガポール発のエシカルブランド「ETRICAN(エトリカン)」のデザイナー/設立者である宇野有実子さんが3回にわたりシンガポールのエシカル事情とその中で奮闘する「ETRICAN」のものづくりについて寄稿してくださいました。

第3回目は、エシカルなものづくりのためにどのようにして工場を選んでいるのか、どのように工場と付き合っているのかについてです。

第1回目「シンガポールってどんな国? そのエシカル事情
第2回目「シンガポール発のエシカルブランド「ETRICAN」設立まで

GOTS認定とは? それが意味するもの

工場のようす

明るく広々とした工場のようす。

第3回目の今回は、私たちが提携しているインドの田舎町にある小さな工場についてお話したいと思います。「ETRICAN」の衣類を生産している工場は私たちのブランドと同じくとても小さいです。この工場を選んだ理由はまず最初に前回の記事でも挙げたようにGOTS(※オーガニック・テキスタイルの世界基準、Global Organic Textile Standard)認定であったこと、そしてそのアットホームな環境が気に入ったからです。

GOTS認定とはオーガニックコットンの栽培・加工の過程でオーガニックの基準を満たし、さらに製造過程では賃金、労働条件、工場の安全面などで基準を満たしていることを証明するための、消費者が信頼できる保障を与えるラベルのことです。最近では、バングラデシュの縫製工場の火災で100人以上の女性が犠牲になるニュースがありました。非常階段がないなど、働く場として当たり前の条件が満たされず、いまだにこのような悲しい事件が起きています。

車や食品などでは、エコやオーガニックといった言葉を見かけるようになりました。しかし残念ながら衣料品に関しては、ありふれたTシャツ1枚を作る裏側で起きている環境破壊や労働搾取などについて、あまり知られていないように思います。そのような状況の中で、しっかりとした国際基準策定機関を通してエシカルな商品を提供するのが私たちの責任だと感じています。

工場がGOTS認定を受けるには、ヨーロッパから検査官を招聘する必要があるなど、時間もお金もかかるプロセスで、大規模な工場であってもその決断を渋ります。私たちの提携する工場がその決断に踏み切ったのは、汚染や搾取を目の当たりにしてきた彼らが、エシカルであることこそ彼らの環境と生活を守る手段だと理解しているからです。

勤務時間、小休憩の時間、お昼休憩の時間、それぞれがはっきり明記されている。

勤務時間、小休憩の時間、お昼休憩の時間、それぞれがはっきり明記されている。

工場を選ぶにあたり、同じ価値観を持っているのはとても重要なことでした。工場がGOTS認定であることを確認した後、私たちも工場を訪問しました。縫製工場の多い地帯から車で1時間弱の場所にある彼らの工場はとてものどかで、そのすぐ外ではヤギを放牧している村の人たちがいます。入り口にはGOTSの規定でもある労働時間がしっかりと提示されています。スタッフは靴を脱いで工場に入り、お昼休みにはお弁当を持って外でくつろぎます。スタッフは経営陣含め、出稼ぎ労働者ではなく全員地元の人たち。地域の人たちに労働の機会を与えるために工場を開設したそうです。

「あなたにとっては、世界は小さいでしょうね」

その情熱にも感銘を受けたのですが、さらにこの工場は、売り上げの一部を使って彼らの地元に孤児院を設立しています。近隣の村の子どもが20人ほど暮らす小さな孤児院ですが、行き場をなくした子どもたちに教育と生活の機会を与える重要な場所となっています。

さまざまなイベントでおもちゃと衣服の寄付を募って、前回工場を訪問したときは孤児院にも寄りました。小さな子どもたちはぬいぐるみで遊んでいたのですが、小学生ほどの子どもたちは私の携帯電話に関心を示し、日本に帰国したときの写真、旅行でオーストラリアに行った写真、私の飼い犬の写真などを見て1時間以上過ごしました。同じ写真を何度も見ながら片言の英語で質問する子どもたちと会話している私たちを見て、経営者の一人が「いろんなところへ旅するあなたにとって、世界はとても小さいように思えるでしょうね」と言ったのが心に深く残っています。

ぬいぐるみで遊ぶ子どもたち

ぬいぐるみで遊ぶ子どもたち

1枚のTシャツの裏に、ゆとりのない世界

私たち「ETRICAN」は、この工場のほかにもいくつかの小規模な工場とパートナーを組んでいます。今回は一番付き合いの長い工場をご紹介しました。ブランドの規模が大きくなるにつれ、納期の遅れやキャパシティオーバーを防ぐためにも、いくつかの工場と連携しながら生産しています。あるスタッフから、彼女が以前働いていた工場は、納期に間に合わせるために連日24時間体制だったと聞いたことがあります。そのようなときはシフト制で働くそうなのですが、夜勤のスタッフは眠気からミシンで自分の手を縫ってしまうこともあるそうです。このような事態を避けるためにも、ゆとりを持って複数の工場とお付き合いすることが最善と思われます。

工場のようす(その2)

デザイナー・宇野さん自ら説明する。

ファッション業界で働くようになって、私は初めて服が作られるその裏側の世界に興味を持ちました。シンガポールでのイベントの際も、「言われるまでその実態に気づかなかった」と、お客さまからと言われます。でもそれはお客さまのせいではないと思います。私たちのふだんの生活では、きらびやかなショップでモデルやマネキンが着ている服を手に取り、気に入れば購入するだけなので想像しづらいでしょう。実際に服を作る人たちの生活が、その一着にあることを忘れてはいけないと思います。

ETRICAN

Website: http://etrican.com/
Online Shop: http://etrican.com/shop.html

この記事のキーワード

Keywords

Sponsored Link
次はコチラの記事もいかがでしょう?

Related Posts