【連載】ヨーロッパのエシカルファッション【全9回】

人によって求める「サステナビリティ」は違う! だからマーケティング!

A Picture of $name texƧture 2012. 2. 29

みなさん、こんにちは! 今月から月に1度、ヨーロッパのエシカルファッションシーンを紹介することになりました、イラリア・パスキネッリです。ヨーロッパで今、どんな動きや取り組みが行われているのか、それによってまたどんな動きが生まれているのか ――ヨーロッパのダイナミックな動きを、マーケティングの見地からお届けしたいと思います。

まずは自己紹介!エシカルファッションとの出合い

私はファッション・マーケティングに携わって10年。ヨーロッパはもちろん、アフリカやラテンアメリカ、そしてアジアという大陸を渡り歩き、さまざまな国でアパレル企業の支援をしてきました。

私がエシカルファッションと出合ったのは2007年。国連機関である国際貿易センターから仕事を受けたときでした。そのときの仕事は、Garments without Guiltというスリランカの衣料品企業が、イタリアでエシカルに原料を調達し、マーケットに参入するのを支援するというものでした。その2年後には、Ethical Fashion FORUMというエシカルファッションブランドのビジネス支援を行うNPOの立ち上げに参加していました。

マーケティングと企業の社会的責任(CSR)

マーケティングというと、消費者の購買欲をかき立ててより多くの商品を買わせるように仕向ける……という悪いイメージがあるのではないでしょうか。確かに、大量生産・大量消費の時代ならそうした側面は否めなかったでしょう。企業にとって大切だったのは、商品のはけ口を生むことでした。しかし実際には、マーケティングは消費者のニーズを知るためのツールに過ぎません。消費者が何を求めているのかを分析し、その要望に応えるためのものです。

今日の消費者は、今まで以上の要望を企業に突きつけています。それは、単純にすばらしい商品を提供して物質的に自身を喜ばせること以上に、社会の中でより大きな役割を担うということ。つまり大きな枠組みとして、取引先や根差している地域など、企業活動に関わる人全てに価値を提供すること。そういった時代のニーズに合わせ、企業は単純な利益追求型のビジネスから転向し、消費者がその企業にどんな社会的インパクトを望むのかを知り、応えていくことが求められるでしょう。

この点において、マーケティングと企業の社会的責任(CSR)が融合し、マーケティングの力が新たに必要になってくるのです。企業がなぜサステナビリティに取り組むのかは、その企業によってさまざまでしょう。NGOのサードパーティ機関にいわれてしぶしぶ……というところも中にはあるでしょうし、ターゲット層がエシカルな商品を求めているからかもしれません。

なんにせよ、企業は責任として、消費者に新しい消費スタイルを提案して物質的な満足を超えた豊かさを消費者に提供しようと試みます。しかし、地域や文化によってどんなサステナビリティーが求められているのかは多様なものなのです。

求められるデザインは人によって違う

例えば、北欧のエシカルファッションショー(c)NICE (Nordic Initiative Clean & Ethical), Oslo Fashion Week 2010. nicefashion.org

ヨーロッパは多様な国が隣り合い、地続きですが互いに全く異なる背景を持っています。つまり、「ヨーロッパ」と一口に言っても、国によって求められるサステナブルの形が異なるということ。特に、デンマークやスウェーデンなどの北欧諸国、イギリス、ドイツでは要求されるスタイルがまったく異なります。

市場規模を推測するにしても、そもそも「サステナビリティ」をどう解釈するかは、人それぞれ違います。厳密にオーガニックでなくてはいけないと考える人もいれば、国内生産品であればいいとする人だっているでしょう。

エシカルファッションのマーケットで行われている調査結果は、まだまだデータとして弱いのです。オランダ政府系の調査機関・CBIによれば、エシカルファッションの市場規模はまだおよそ12億円ほど。全アパレル市場の1%ほどしか占めていません(※1)。同報告書では、オーガニックコットンの市場占有率も1%ほどと発表されましたが、その数値は2009年の売上高としては4億円にも満たないのです(※2)。

市場拡大を目指そう

しかし着々と成長をしています。イギリスに限って言えば、2004年の時点でオーガニックコットンの売上は1億7500万円ほどでしたが、2009年には約38億円にまで伸びました。小さい規模で動く企業・デザイナーの方がこの波を引っ張っており、人によってまったく異なるアプローチで臨み、ムーブメントを作っています。

ZARA、H&M、Primarkといった企業は、大量消費型のビジネスモデルで運営された企業ではありますが、もしこうした大きな影響力を持つ企業が透明性の高い誠実なサプライチェーンを構築すれば、エシカルファッションの市場はもっと大きくなるので、期待していきたいところですね。

それでは、今月はここまで。また来月!

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