【連載】古都フエで生まれるPhuhiepのものづくり ~女性アーティザンたちのサイドストーリー~【全8回】

月の満ち欠けとベトナムの人々の暮らし

A Picture of $name Phuhiep 2014. 11. 5

パリで開催された世界的な合同展示会から帰って、日本では木々の葉の色づく美しい季節となりました。

日本には美しい四季があります。春、夏、秋、冬……それぞれの彩りを生活に取り入れてきたのが日本の人々。対して、ベトナムでは月の満ち欠けに合わせて暮らしています。「Phuhiep」のアトリエでは、今日も月の満ち欠けに沿って、アーティザンたちが祈りを捧げています。

折々の豊かな四季の移ろいを、山の草花や自然の生き物などの身近なものから感じ取り、愛で、その味わいが人々の暮らしに彩りを与えるものとして、古来より生活に取り入れてきた日本の人々。「東風解凍」「蟄虫啓戸」「半夏生」「霜始降」……現代では耳にすることも少なくなった、これら七十二候の言葉にもあるように、日本でも古くは季節の変化を繊細に感じながら暮らしを営んできました。

さまざまなお供え物を準備して祈りを捧げます。(Photography by Ha Le)

さまざまなお供え物を準備して祈りを捧げます。(Photography by Ha Le)

現代において、ベトナムこと「Phuhiep」のアトリエがある古都フエでは、月の満ち欠けを基準とした旧暦に沿って人々は暮らしています。 満月の日にはお供え物を飾り豊穣を願い、新月になれば家の前に祭壇を作り先祖に祈る。自然や季節の移ろいを月のかたちから読み取り、月のリズムとつながって暮らすことは、大切に受け継がれてきた人々の習わしです。

アトリエでも、この古都フエの慣習に習い、毎回ベトナム人マネージャーが中心となって、お供え物を準備してアトリエの入り口付近に簡易の祭壇を作ります。「五穀豊穣」「家内安全」「商売繁盛」「無病息災」などなど(?)スタッフで祈りを捧げています。
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シグニチャーモチーフに込めた思い

「Phuehiep」のアクセサリーのシグニチャーモチーフとして、リングがたびたびデザインに登場します。月の満ち欠けに准じた旧暦で暮らしているベトナム・フエの人々。 季節の行事や日々の習慣なども月とともにあり、月はベトナムの人たちの毎日を照らし続けてきた光。そんな神聖で身近なベトナムの「月」のイメージをこのリングは象徴しています。

(Photography by Jiro Nakajima)

(Photography by Jiro Nakajima)

またもう一つに、循環の象徴としての「輪」の意味を込めています。 アクセサリーを作ることでベトナムの女性たちの暮らしが豊かになり、アクセサリーを身につけた人たちにも幸せな気持ちが届く。作る側と身に付ける側、両方に幸せが訪れる循環。

作り手たちに仕事を提供し、働いた分を還元して自立した生活ができる環境を作っていく。そして製品を買ってくださるお客様には、丁寧に心を込めて作ったアクセサリーとともに、晴れやかな気持ちをお届けする。売り手にも買い手にも作り手にも「幸せな循環」が生まれ、いつまでも続いてゆくようにーー国も年齢も言葉も、貧富や力の差も、なんの境目もなく全ての人々とつながるアクセサリーでありたい。シグニチャーモチーフでもある「Phuhiep」の輪っかには、そんなブランド・フィロソフィーが込められています。

(次回に続く)

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