いま、トランスジェンダーモデルたちに大きな注目が集まっている。
米国が2016年に行った調査（※1）によると、約140万人もの成人が自らをトランスジェンダーだと認識しているという。
別の調査研究（※2）では、トランスジェンダーの男女ともに、自殺あるいは自殺未遂の割合が高まる傾向にあるという。
毎日の生活で受けるハラスメントや差別・拒絶といったものに起因する精神的な要因が原因と見られている。
幸いなことに新しいモデルの躍進や、ベテランのモデルの働きもあって、業界でのトランスジェンダーのムーブメントが、大きなうねりになりつつある。
そこで今回は、大きな活躍を見せている注目のトランスジェンダーモデルをご紹介する。
1. Pêche Di
自身もモデルであり、アメリカ初のトランスジェンダーのモデル事務所の設立者。自身で直面した業界での差別が、この「Trans Models」という事務所を設立するきっかけとなった。
まだまだ小さな事務所だが、トランスジェジェンダーモデルにとって、確実に大きな心の支えとなっている。
2009年に始まったInternational Transgender Day of Visibility（世界トランスジェンダー可視化の日）に、彼女はこう公言している。
私たちも社会の一部。あらゆる職業に就ける可能性があって、あらゆることへの興味関心も持っている。人口統計にだってちゃんとカウントされている。存在していること隠したり、沈黙したりは、これからは絶対にしません。
2. Hari Nef
アメリカ企業であり、Alek WekやGemma Ward、Giseleなど、名だたるモデルも擁する総合マネジメント企業・IMG。アクティビストや女優以外で、同社と契約した初のトランスジェンダーの女性が、Hari Nefである。
Nefは性別の概念に変化が起こりはじめた時期にモデルとしての活動を始め、後に性別適合手術を行った証明書も公開している。
20万人以上いるInstagramのフォロワーに向けたメッセージで、彼女はこう言っている。
私は仕事を通じて、服と関わってきました。しかもその多くは、ラグジュアリーで高級なものばかり。もちろんこれらの服は素晴らしく、美しい。けど、決してなにかを大きく変えるものでもない。また身なりが、自分を癒やしたり、なにかに抵抗したりする唯一の方法でもない。たとえそれが「Gucci」だろうと「Goodwill」だろうと、常に自分自身が強く、変わり者で、「カラフル」でいないとね！
3. Shane Henise
コロンビア大学出身で、トランスジェンダーについての研究者であり、提唱者、パブリック・スピーカーでもあるShane Henise。彼もTrans Models NYC所属のモデルだ。
Shaneはこういった活動の場がトランスジェンダーを世間に知ってもらううえでは良い機会だと考え、積極的に活用している。
トランスジェンダーがメディアに取り上げられることは少ないので、世の中の私たちに対するイメージは画一的です。でも、一口にトランスジェンダーといってもその実は多様で、アイデンティティの表現の仕方もそれぞれ、さまざまです。私はそんなトランスジェンダーのリアルな様子を知ってもらい、理解の一歩としてもらえたらと思うのです。
4. Carmen Carrera
Carmen Carreraは、Elite Models New YorkとL.A. Models Runwayの2つの事務所と契約を交わしたモデルで、テレビのリアリティ番組に出演したり、アートプロジェクトに参加したりと、幅広い分野で活躍をしている。
同時に、俳優やアクティビストとしての顔も持っており、大学での講演で常にトランスジェンダーの権利について語ったり、インタビューを受けることも多い。
彼女は、あるドキュメンタリー番組の中で、ブラジルのトランス・コミュニティーの惨状について語ったことがある。ブラジルでは、実に多くのトランスジェンダーの人々が、悩みぬいた末に自殺してしまっているという。
世界は変わらなければなりません。そして私は、未来ある若い人たちがトランスジェンだーだからといって、虐げられることのない世界の実現のために、なんだってする覚悟です。
5. Laith Ashley (De La Cruz)
歌手、作曲家、ダンサー、モデルとして活躍するLaith Ashley。Barneys New Yorkとの映像作品で、華々しくキャリアをスタートさせ、トランスジェンダーとして初めて全国的なキャンペーンにも参加した。
米・VOGUE誌でのインタビューの中で、彼は、アメリカでトランスジェンダーへの理解が少しずつ得やすくなっていること、自身も家族や近しい人からのサポートを得てきたことなどを語っている。
15万人ものInstagramのフォロワーに対しても、胸に刺さるメッセージとメガワット級のスマイルでこう語る。
私は黒人であり、ラテン系アメリカ人でもある。移民の子であり、トランスジェンダーの男でもあります。私は自分に正直に、誇りを持って日々生きていますし、私が得られた幸運を生かしてコミュニティのために力を尽くしたいと思っています。
6. Casil McArthur
10歳のときからモデルとして活動しているCasil McArthur。しかし、長年苦しんできた性別の抑圧から開放されたいま、10代ならではの変化を見せはじめている。
彼は友人や家族、そしてエージェントたちにも包み隠さず真実を伝えた。そんな彼の努力が、ニューヨークの大手モデル事務所・Soul Artist Managementとの契約に結実した。
ソーシャルメディアでも彼は、自身の性別変化の過程を公開した。最近の投稿で彼は、Dani Roseとして活動していた頃と現在の写真を並べ、次のように綴っている。
自分自身と闘い続けることを止めないで。だって、その戦いの見返りは思ってる以上に素晴らしいものだから。もしあなたがすでに闘っているとしたら、それは絶対、報われる。だから決して、諦めないで。
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