「Goodone」による世界初のアップサイクル専門工房「One Good Factory」

2012. 6. 5

「布を再利用して組み合わせ、イギリス製のサステナブルな布を作る」というのが、イギリスのアップサイクル系ブランド「Goodone(グッドワン)」の存在意義だという。同ブランドはロンドンファッションウィークに登場し、世界の反対側(例えば日本)にも商品を届けている。また、大手スーパーチェーン・Tescoとのコラボアイテムを発表するなど、ファッションのメインウェーブの中に身を置き続けている。

アップサイクルに取り組むブランドは、おそらくみなさんが思う以上に成功を収めている。しかし現在、彼らは激変の波の中にいる。ある者はスタジオを移設し(「Junky Styling」)、ある者は戦略を変更し(「From Somewhere」)、またある者はより大きな成功を求め、歩みを進めている。その1つである「Goodone」の最近の動きはどうだろうか? 彼らはアップサイクル工房「One Good Factory」を設立したが、これは従来「Goodone」が行なってきたとおり古布を回収し、服に仕立てるという工房だが、さらにいつでもそれらを再び迎え入れ、新たな服に仕立て直すというものである。この工房でアップサイクルに取り組みたいというデザイナーのオーダーを随時受け入れ、彼らのアップサイクル支援も行う。デザイナーにとっては、単純に服を作って終わりではない。その服が一度命を終えたかというときに、再び命を吹き込むことができるという、世界初のアップサイクル専門の工房なのだ。

エシカルファッションのブログメディア「Shirahime」では、この工房を設立した「Goodone」の2人のデザイナー・Nin Castle(ニン キャッスル)とClare Farell(クレア ファレル)にこの試みについて話を聞いた。

―― このような工房を設立しようと思ったきっかけはなんだったのでしょう?
2006年のブランドの設立以来、私たちはずっとアップサイクルに取り組んできました。当初は、消費者の古着をベースに作っていましたが、その他にもさまざまな珍しい生地を用いたアップサイクルにも挑戦してきました。2度にわたるTescoとのコラボレーションを経て気づいたのは、大企業こそ服をアップサイクルさせるためのサポートを必要としているということでした。そのサポートを行い、アップサイクルを推進していくというのがこの工房の第一の役割です。

もちろん、一度使用された生地も有力な素材となりうるという良い事例となりたいという思いもあります。それ以上に、アップサイクルに興味がある企業・ブランドは多いのですが、どうやって始めたらいいのか考えあぐねているところも多いので、その支援をしていきたいのです。単純にアップサイクルできる服を集めてくればいいというものではないですから。

しかし、「すでに世に出回っている生地ほどエコな素材はない」というのは紛れもない事実なのです。すでにある素材をいかに使い回していくか。それによって、埋め立て地に送られるゴミも減りますし、原材料の生産に伴う負担が減るので、環境に対してもエコです。

―― 環境・社会には、どのような好影響が具体的には生まれるのでしょう?
私たちは常に環境と社会への影響を念頭に置いて仕事をしていますし、もちろん、正当な賃金を支払ってもいます。この工房があることで、商業的に受け入れられるデザインと質のアップサイクル商品を作ることにより集中できます。切り端・端切れなども全てアップサイクルしようと思っています。


―― 工房はブルガリアにあるそうですが、なぜ自身の本拠地であるイギリスではなく、ブルガリアなのでしょう?
2011年までは、イギリス国内で全て生産していました。それは自慢でしたよ。しかし、やはり人件費が高くついてしまいます。海外で生産すれば、半額にだってできますから。そうやって生産を行なっているバイストリートブランドと互角に戦っていくためには、どうしてもイギリス製のままでは難しかったのです。

同時に、これでハイストリートに大きな影響を与えることができると思っています。私たちの目的を叶えながら、価格の面でも十分戦えるものになったということはもちろんです。ブルガリアの工場は、ヨーロッパ内で高品質で生産したいという私たちの願いを叶えてくれました。それゆえ、私たちは価格を適切なものにしながら、品質・生産プロセス、そして労働者の労働環境もしっかり管理することができるようになりました。

―― 工場の労働者に対して、トレーニングは行いましたか? 行ったとすればどんなふうにトレーニングを行われたのでしょう? 言語の問題もあると思いますが……
ブルガリアに、もともと私たちと一緒に働いていた友人がいます。私たちがつたないブルガリア語で話すより、彼女が英語を話したほうが何倍もスムーズなのです! 彼女がオペレーションを見ていますし、私たちも定期的に訪問しています。現段階では、トレーニングをしなければならないほどの規模ではありませんが、いずれ規模が拡大してくれば、私たちもブルガリアに行ってトレーニングをしなければならないでしょうね。

―― One Good Factoryの工房では古布と古着、両方のアップサイクルに対応可能ということですが、それはつまりどういうことなのでしょう?
私たちの目的とは、できるだけ能率的に生地を使用し、できるだけ少ない工程で服を仕上げることです。ここでは、回収された古布に、できるかぎりダメージを抑えた加工をします。それはつまり、再び服としてここに運び込まれてきた際に、使用できる余地を大幅に残すということです。この工房にはどんなテキスタイル余剰品からも高品質な服を作り出すことができるノウハウが詰まっているのです。

例えば、工房では厳密に色と用途によって布を仕分けていますし、時間と繊維の無駄になるので古着を完全には解体しないといったことです。


―― 工房で回収している古布・古着はどうやって集めているのでしょう? どこか提携しているサプライヤーでもあるのでしょうか?
最近、テキスタイルリサイクル企業の代表者と知り合いましたが、彼の企業では毎年10億トンものテキスタイルゴミを扱っているのだそうです。おそらく、世界最大の量ではないでしょうか。その企業を通じて、かなりの量の古布を仕入れることができます。そうした大企業なので、一般的なリサイクル企業よりもきちんと古布を仕分けていて、私たちもほしいものが手に入りやすいのです。以前はイギリス国内の古布・古着を扱っていましたが、これでヨーロッパ中の古布・古着を取り扱えるようになりました。

―― 工房が軌道に乗るまで、たくさんの困難があったかと思います。この困難からどんなことを学びましたか?
多くのことを今回学びましたが、3年前にイギリス国内で私たちのオーダーを受けてくれる工房を探していた頃に学んだことが今回役立ちましたね。でも今回、国境を超えて仕事をしていくにあたって、国民の祝日が異なることが一番の問題かしら……!
まだまだ多くのことを学んでいかなければなりませんね!

―― この工房では他のデザイナーのオーダーも積極的に受け付け、彼ら自身のアップサイクルコレクションの製作を請け負っていますね。他のデザイナーとどのように協業しているのでしょうか?
私たちは柔軟性を第一に大切にしています。私たちの工房を使用するにあたって最低製作体数なども設定していません。オーダー数が少ない場合は、工程数に応じて価格を柔軟に対応させます。現状では2~3カ月で5000着を生産可能です。

私たちは常日頃もどんな企業とも手を取り合いたいと思っており、そのようにしてきました。私たちは大きな企業と争うつもりもありませんし、むしろ一緒に仕事をしたいと思っています。私たちの目的とその大企業の目的が異なるものだとしてもです。何か気に入らない点があっても、改善するために努力することでしかその先の道は拓けません。私たちは、ハイストリートを撲滅したいという思いではなく、ハイストリートをより良い場所にしていきたいと思っています。今のハイストリートの状態が好きではないからです!

This Article is Originally from...

Pamela Ravasio 'One Good Factory: Goodone’s high-street ready upcycling garment factory' SHIRAHIME , May 24, 2012

>> http://shirahime.ch/2012/05/one-good-factory-goodones-high-street-ready-upcycling-garment-factory/

(許諾を得て掲載)

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