先進国でも労働搾取――「Made in UK(イギリス製)」ファッションの隠れた実情について研究発表

2015. 3. 12

世界中で「国産」がブームになっている昨今。「国産」を謳い、信頼と品質、地域産業への貢献を訴えるブランドは数多い。その内実が少しずつ問われ始めているが、それを明らかにするレポートがイギリスで発表された。

「Made in UK(イギリス製)」の現状を切り取ったのは、レスター大学内の持続可能な職と雇用の未来を研究するセンターが発表した57ページにおよぶレポート。それによれば、イギリス国内の縫製産業は歪んだ構造のうえに成り立っており、法令も守られていないケースが散見されるという。働いているのは脆弱な立場にある移民。その給与は、イギリスの法定賃金が時給6.50ポンドであるのに対し、実際支払われているのは時給3ポンド(※約4.50米ドル、およそ540円、2015年3月12日現在)とも。

Some Rights Reserved by Petras Gagilas / Via Flickr

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今回の調査は、レスター大学・Nik Hammer博士が、英国の倫理的業者推進NGO・Ethical Trading Initiative(エシカル・トレーディング・イニシアチブ、ETI)の委託を受けて行ったもの。ここ数年、縫製産業における成長が目立つ、イングランド中部・レスター内の縫製産業に特化し、半年にわたって調査を行った。調査には、実際の労働者への聞き取り調査も含む。

イギリスのアパレル産業は、2007年以降急激に回復。2008〜2012年の間に11%成長を遂げた。しかしその労働者の賃金は、法定賃金の半分ほど。雇用契約書も交わされていないという。聞き取り調査では、健康上の問題、健康管理や安全管理が十分でないこと、いじめなどの人権侵害を訴える者も。

労働者には途上国からの移民も少なくなく、聞き取り調査では「英語を話すのが困難」と回答した割合は70%にものぼるという。Nik Hammer博士は、「彼らは他の仕事に就きにくい。縫製産業は言語スキルが比較的必要ないから(就労しやすい)」と説明する。

また、グローバル化の影響についても言及しており、「国内縫製産業へ発注しているのはグローバル企業。彼らは国外にも豊富な委託工場があり、国内工場は海外工場と競争をしている。とにかく安く仕上げなくてはならない。それにもかかわらず、グローバル企業からのマージンは大きくない。長い不況の間に、産業構造は大きく変化したようだ」とも。この状況を改善するためには、労働組合と労働者が強く声をあげていく必要がある、と同博士は話している。

委託したETIのDebbie Coulter(ETI Head of Programmes)は、「レスターの縫製産業が引き続き成長することを望んでいます。しかしその成長は、適切な労働によるものでなければなりません。せめて、法定賃金を満たすことから始めなくてはいけません。我々ETIは関係各所とともに、そのサポートを積極的に行っていきます。そのためには産業に関わる全てのステークホルダーの協力が必要」と話している。

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