人のつながりを無数に生み出す「SCHMIDTTAKAHASHI」のニューモード

A Picture of $name HITOMI ITO 2015. 2. 8

使用されなくなった服に新たな命を吹き込み続ける。異素材を意外な組み合わせで掛け合わせて生まれる味わいーーユーズドアイテムをただ再利用するのではなく、それぞれの素材やディテールを生かして新たな命を吹き込むのは、ベルリン発の「SCHMIDTTAKAHASHI(シュミットタカハシ)」。

「SCHMIDTTAKAHASHI」は古着の回収ボックスを設置しており、広く服のドネーションを募っています。寄付された服は、1枚ずつは洗濯・アイロンがけされ、その後、各アイテムにIDを付与し、の寄付者(匿名)・色・素材・写真といった情報をデジタルデータベースに保存。寄付した人は各アイテムのIDを受け取り、そのIDを使用してアイテムのその後ーーどんな服に生まれ変わったかーーを追跡することができます。「SCHMIDTTAKAHASHI」では、その膨大なアーカイブのアイテムを組み合わせ、全く新しいアイテムに生まれ変わらせます。

新しく誕生したアイテムには一つずつ「Product ID」を付与。買った人も、タグに付けられたQRコードまたはサイト上で「Product ID」を検索することで、誰が寄付したアイテムが元になっているか、元はどんなアイテムだったか、同じ服を使って他に生まれたアイテムには何があるか……などを調べることができます。

ブランドを設立したのは、Eugenie SchmidtさんとMariko Takahashiさんの2名の女性。「もともと古着に興味があり、チャリティーショップやヴィンテージの洋服屋さんで、おもしろい洋服を見つけて改造して自分で着るのが好きだった」と話すTakahashiさんに、ブランドのストーリーを伺いました。

(左)Eugenie Schmidt 1979年タジキスタンのドゥシャンベ生まれ。ベルリンのHTW Berlin(University of Applied Sciences)とベルリン・ヴァイセンゼー美術大学にてファッションデザイン、ベルギーのRoyal Academy of Fine Arts Antwerpにてコスチュームデザインを学ぶ。 (右)Takahashi Mariko 1974年広島県生まれ。武蔵野美術大学にてプロダクトデザイン、ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学にてテキスタイル&表面デザインを学ぶ。日本・ドイツでキャリアを積んだ後、Eugenieとともにドイツでブランドを設立。

(左)Eugenie Schmidt
1979年タジキスタンのドゥシャンベ生まれ。ベルリンのHTW Berlin(University of Applied Sciences)とベルリン・ヴァイセンゼー美術大学にてファッションデザイン、ベルギーのRoyal Academy of Fine Arts Antwerpにてコスチュームデザインを学ぶ。
(右)Takahashi Mariko
1974年広島県生まれ。武蔵野美術大学にてプロダクトデザイン、ベルリン・ヴァイセンゼー美術大学にてテキスタイル&表面デザインを学ぶ。日本・ドイツでキャリアを積んだ後、Eugenieとともにドイツでブランドを設立。

―― ブランド設立までの経緯を教えてください。
Eugenieと私は、ベルリンの美術大学での同期でした。私はテキスタイル、Eugenieはファッションの専攻だったのですが、生徒数が少ない大学だったので、いろんな専攻の学生との交流が盛んなでした。いつの頃からか、共同のプロジェクトをするようになりました。

―― そもそもTakahashiさんは、なぜドイツにいらしたのですか?
ドイツに特別興味があったわけでもなかったのですが、いろいろな国や文化が隣同士で共存しているヨーロッパの環境と、まだ新しい都市だったベルリンの変化を体験したかったというのが、一番の動機だったように思います。やはり、いろいろなバックグラウンドを持っている人々に出会えるのはベルリンのおもしろいところです。ドイツに来てだいぶ経ちますが、いまでも確定申告などのさまざまな書類は苦手ですね。


―― 「SCHMIDTTAKAHASHI」のモデルは、ただのアップサイクルでない感じがして、とてもクリエイティブです。このようなブランドのしくみを作った理由はなんでしょうか。
もともと古着に興味があり、チャリティーショップやヴィンテージの洋服屋さんで、おもしろい洋服を見つけて改造して自分で着るのも好きでした。誰かが着古した形跡を見ると、どんな人が着ていたのか想像がふくらんで、新しい洋服を着るのとは、少し別の感覚が湧いてきます。その特別な感覚を、特別なものとしてブランドの一部として取り入れたくて、このシステムを思いつきました。

ドネーション(洋服の寄付)は、私たちのスタジオに直接持ってきてもらったり、あまり遠くないところであれば、私たちが引き取りに行ったりしています。その他にも、展覧会やワークショップなどのイベントがあるときは、お客さまに持ってきていただいています。日本でも将来的には、ワークショップや展覧会などのイベントを企画できればと思っています。

―― ドイツは環境意識が高いことでも有名。このようなしくみにされた背景には、そんな意識もあったのでしょうか?
エコ的な思いか、古着が好きということーーどちらの動機が先だったのか、いまでは忘れてしまいました。最初は個人的に、ずっと着ない洋服が溜まっていくのに、愛着もあって捨てがたい、という状況だったのが大きなインスピレーションでした。洋服のデザインを職業としていく人間として、この問題をどうやって解決したらいいか考えてきました。これまでやってきて、同じように洋服に愛着を持って大切に着古し、それをさらにクリエイティブに再利用したいと思っている人がたくさんいることを認識しました。

―― このような手法を取ることによって、ビジネスの面で「得をした」ことはありますか?
素材を節約できる反面、服づくりに掛かる手作業の割合が多く、コスト面ではメリットはないと言っていいと思います。一つひとつの行程を丁寧に仕上げていくため、プロダクトとしての完成度は高くなっています。しかし、いいものをデザインしたいと思うと、必然的に難しいものだと思いますが、それが楽しいです。

―― リサイクルやアップサイクルは、いくぶんか親しまれるようになりましたが、まだまだファッションとしては「やぼったい」イメージもあります。エコ先進国といわれるドイツではいかがでしょうか?
ドイツでは、エコ文化の歴史が長く、浸透率も大きいのですが、やはりやぼったいファッションや、味気ない食品、不便な生活用品といったマイナスのイメージがまだ残っているかと思います。

ドイツの人は、もののクオリティーに対してとてもシビアです。環境意識とは関係なく、良い素材やしっかりと作ってあるものには、少し高くてもお金を惜しみません。その代わり、見た目の美しさや遊び心にはあまり惑わされないように感じます。退屈でも長持ちするものに価値を見いだす国民性なのかと思います。その意識が反映されて、社会全体の生活水準を守ることが個人の豊かさにつながると考えられているんだと思います。

これまで、ベルリンであまりお金を使わなくても、それなりに豊かに暮らしてこれたことをときどき実感します。公共の交通機関や自転車でどこへでも行けることや、大学や図書館、文化施設が自由に利用できること、湖や森が近くにあり、余暇を自然の中で過ごせることなどが、誰にでも可能です。その代わり、贅沢はあまりかなえられない環境です。自動車や洋服の代わりに、自転車やDIY[*wikipedia]にたくさんお金をつぎ込んでいる人がたくさんいます。

―― では最後に、ブランドとしての今後の課題や、目標を教えてください。
リサイクル/アップサイクルのみに収まらず、洗練されたデザインを追求したブランドになっていきたいです。商品を売るだけではなく、洋服をデザイン/リサイクルする楽しさをワークショップなどでも、伝えていけたらと思っています。



S&S15 Photography Credits
Photography: Mary Scherpe
Styling: Sebastiano Ragusa
Models: Miha / PMA & Alla / Modelwerk
Hair & Make up: Chista Raque
Location: Botanischer Volkspark Berlin Blankenfelde-Pankow

SCHMIDTTAKAHASHI

Website:http://www.schmidttakahashi.de/

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