本質を追求した取捨選択がデザインには必要 〜ニューヨークのシューズブランド「Coclico」の場合

A Picture of $name Shiho Hasegawa 2014. 3. 19

優れたエシカルファッションブランドに贈られる「The SOURCE Awards」を受賞したブランド「Coclico(コクリコ)」。エシカルかつサステナブルに作られているだけではなく、デザイン性の高さから、Footwear部門で優勝しました。

エシカルなシューズブランドにはヴィーガンレザーを使用するブランドが多い中、「Coclico」はそれをせず、動物由来のレザーを使っています。ヴィーガンレザーを使用しないという選択をしたのはなぜか? 同ブランドがそのほか選び取ってきた答えとは? 今回、「Coclico」のBrand Development Officer・Diana Haberさんに話を伺いました。

エシカルであることとファッション性の両立が難しいのは、生活者にとっても同じ課題。自身の価値をきちんと見つめながら選択を繰り返してきた「Coclico」の姿勢に、生活者として選択していくうえでのヒントがありました。

「Coclico」Brand Development OfficerのDianaさん

「Coclico」Brand Development OfficerのDianaさん

「長く使う」という視点から選択する

―― ヴィーガンレザーを使っていないのはなぜでしょうか?
ヴィーガンレザーは基本的にプラスチック(※石油由来の繊維素材でできた合皮の意味でいっている)なので、私たちは使っていません。環境面や、耐久性の面、色落ちの面でもプラスチックは動物性のレザーには敵わないと判断したからです。

私たちが重要視しているのは、「長く使える」ということ。毎年、何トンもの靴が捨てられています。だから私たちは、使い捨てのファッションを少なくし、何シーズンでも使えるような靴を作りたいと考えています。レザーは手入れすれば何年も履くことができ、きれいに色落ちがするのも一つの楽しみです。レザーは「長く使う」という面では、圧倒的にエシカルな選択肢だと思っています。

―― そのほかにはどういった取り組みでエシカルを実現していますか?
Native Energyという第三者機関に二酸化炭素排出量を計算してもらい、排出した二酸化炭素の分だけお金を払うと、環境開発プロジェクトを遂行する資金として活用されます。昨年はケニアの汚染水を浄化するプロジェクトや、インディアナ州での風力発電開発のプロジェクトなどが行われました。

また、私たちは植物タンニンなめし(※食物の渋〈しぶ〉を用いて皮を加工すること)の革を使用しています。植物タンニンなめしのレザーはクロムなめしと違って危険な薬剤を使用しないので、環境への負荷が少なくて済みます。しかし、水の使用量は普通のなめしに比べ多くなります。それらを比較して、環境への負荷は植物タンニンなめしのほうが少ないと判断しました。ファッションとしても、時が経つにつれて味が出て、きれいに色落ちするので、植物タンニンなめしのほうが断然優れていると思っています。

スエードは、クロムなめしを施したもの以外では難しく、他の選択肢がないためそのまま使用しています。そしてヒール部分などにプラスチックを使うこともまれにあります。どんなときもさまざまな選択肢を考慮し、自分たちが一番のソリューションであると判断したものを選択をするよう心がけています。

環境に良いだけではなくデザインも考えて、最高の選択を心がけます。私たちは靴が好きで、ファッションが好き。そしてこの地球も愛している。エシカルであることに強いこだわりは持っていますが、私たちが取り組んでいるのはファッションであるということを忘れてはならないと思っています。

プラスチック系素材ではなく、再生使用が可能な素材であるコルクを使用したヒール

プラスチック系素材ではなく、再生使用が可能な素材であるコルクを使用したヒール

ニューヨークは選択肢があるという面でエシカル

―― 展示会はどこで行っていますか? また、どこが最も手応えがありましたか?
展示会は、ニューヨーク、ラスベガス、ロンドン、パリなどで行っています。その中でも、ニューヨークの反応が一番良いです。

さまざまな理由があると思いますが、最大の理由はニューヨークの女性のライフスタイルにインスピレーションを受けて作っているブランドだからだと思います。行動的で、いつも前向きな女性。忙しいけれど毎日一生懸命頑張って輝いている女性が、毎日履けるような靴を作りたかったんです。いつでも自由に動けるように履き心地の良さを追求しているのも、ニューヨークの活動的な女性をイメージしているからです。

東京の女性とニューヨークの女性もそういう点では共通点はあるのではないかしら? 仕事もプライベートも充実させるアクティブな女性。そういう人にインスピレーションをもらっているし、私たちのターゲットです。

coclico-3

―― ニューヨークはエシカルな街だと思いますか?
 正直、大多数の人たちはエシカルなことやサステイナビリティについて考える時間もお金もないと思います。でも、ニューヨークという街には、消費者に選択肢が提供されているという点でエシカルな街といえるのではないでしょうか。オーガニックな野菜を買うか、安いスーパーで買うのか。そしてファストファッションを買うのかエシカルブランドを買うなのか。小さな街にはエシカルな選択肢すら存在しないですからね。それに、他の都市と比べてニューヨークは環境に対する教育が進んでいる街だとは思いますね。環境に対する運動や活動の大きなコミュニティーがニューヨークにあるのも確かだと思っています。

―― 他のブランドにニューヨークでビジネスを始めることを勧めますか?
 物価や家賃が高かったり競合が多かったりと、ビジネスを運営していくのには難しい側面もあります。ですが、その一方でとてもクリエイティブな環境が整っている楽しい街です。コネクションやネットワークも作りやすいので、若手の方にとっては良いかもしれないですね。

coclico-4

『エシカルなんていらない』

―― 今後の目標は何でしょうか?
こうやってとりあげてもらうのは本当に嬉しいことだと思っています。けれど、エシカルブランドとして取り上げてもらうこと自体は良いことだと思っていません。だって、こうしてエシカルな取り組みとして取り上げられているということは、これがスタンダードじゃないということでしょう? 私たちは全ての会社がこのように配慮した取り組みをしてくれれば良いなと思っています。

そして、私たちはアパレル企業であることを強調したいです。そこに妥協はしたくありません。エシカルなブランドであるというより、ファッションのブランドとして認められていきたいですね。

(インタビューここまで)

エシカルなブランドを作るということは、さまざまな選択を迫られます。エシカルであることと、ファッションであることが両立しない場合も多々あるでしょう。その中で自分たちの大事な核になる部分に照らし合わせ、取捨選択をしている「Coclico」の強さと美しさは、靴を通して世界中に広がりつつあると感じました。

まだまだ選択肢が少ない日本では、なおさらエシカルであることとファッション性を両立することが難しいのが実情です。「Coclico」のように、自分にとって何がいちばん大事なポイントなのかを考えながら判断していくことで、理想とする「美しさ」を実現していけるのではないでしょうか。

この記事のキーワード

Keywords

Sponsored Link
次はコチラの記事もいかがでしょう?

Related Posts