TEXSTUREが見る、日本企業とヨーロッパ企業の「エシカル」の違い

2013. 8. 27

イギリスに本部を置くエシカルシンクタンク・TEXSTUREのPamela Ravasio(パメラ・ラヴァシィオ)氏が訪日。日本の大手企業を数社訪問し、日本とイギリスのエシカルの違いを話した。

同氏が訪問したのは、エコな繊維開発でも注目を集める東レ、リサイクル素材の開発で一目置かれる帝人、ホールガーメントで有名な島精機製作所など。数社を訪問して、同氏が気づいた大きな違いには、まず「透明性(Transparancy)」の捉え方がある。

日本に縁の多い、Pamela Ravasioさん。日本の大学院で学んだことも。

日本に縁の多い、Pamela Ravasioさん。日本の大学院で学んだことも。

「透明性」の捉え方

「イギリスで企業の透明性が求められ発展してきた背景には、市民からの要請があった。それに対し、日本の企業が透明性を重視する背景には、ビジネスという要素が大きいように感じる。透明性を語るとき、ビジネス的な見地から話題が出発することが多かった」と同氏は話す。

日本でいう透明性(Transparancy)とは、「業務の活動状況の進捗状況や状態、実績を見えるようにする仕組み。例えば、各部署での業務は他部署の業務と連鎖していると考え、業務の川上、川下に状況を見た目ですぐ分かる仕組みで知らしめるようにする※Weblio」とあるとおり、業務の効率化を図り生産性を高める意図が多く伺える。

「訪問したある企業は、大量生産型のビジネスモデルを採っており、効率化を図ることでゴミの削減・コストカットの効果が非常に大きい。そのために、社内の透明性を強化しているというのはうなずける」と同氏は話す。「各部署のオペレーションを把握し、どこに無駄があるのかを社内で把握する効果は、大量生産型ならば有効だろう」。

また、帝人はエコサークルを使用していくために他社の透明性が欠かせない。理由は、「素材に何が入っているのか詳細に分からなければ、エコサークルが使えないから」。エコサークルとは、帝人が世界で初めて開発したポリエステルのケミカルリサイクル技術を核とする循環型リサイクルシステムのこと。ユーザーから回収したポリエステル繊維製品を、化学的に分解・原料にまで戻すことで、品質を劣化させることなく何度でも新たな製品として再生することができる。最終的にはゴミとなる従来型のリサイクルと違い、半永久的に資源を循環させることができるという。帝人自身が開発したポリエステル繊維ならば、繊維そのものの組成から染料まで原料が分かるが、他社製のものだと調べることが難しいため、エコサークルに使用できない。そのために、帝人自身が他社に情報開示を求めているという。

「顧客側がパフォーマンスのために知りたがるケースも特徴的に感じた」と同氏は話す。「東レの顧客には、アウトドア系のブランドが多いため、どのくらい長持ちするのか、十分に丈夫なのか? などの点を説明するために素材の情報開示を行っているようだ。また島精機製作所では、ホールガーメントを売り込むときに、生産性を強くアピールできるため顧客に積極的に情報開示を行っているという。1着を作るのに必要なエネルギーコストが低いほうが、顧客は嬉しいはずだ」

「ヨーロッパでは、もともと一般消費者、NPOのプレッシャーがあって透明性を目指す動きが生まれてきた。一般消費者が信用するための道具として透明性がある。しかし、日本では逆だ。まずは、ビジネスケースが多い。結局利益につながるから自然と透明性が求められてきたような流れを感じる」。

「品質」の捉え方

次に大きな特徴を感じたのは、日本の企業が消費者の買い物体験を含めた総合的な品質を追求する点である。「日本では、サステナビリティを語るにあたっても、まず品質の話になる。品質を維持・向上させながらサステナビリティを実現することが日本では非常に重視されているように感じた。ヨーロッパの企業と話すときには、品質の話はすぐにトピックに上がらない」。

日本のアパレル企業は、買い物体験を「最適化」している、と同氏は話す。「例えば、100円ショップですら、お客さんが買いやすいように整理され、手にとった商品もすぐスタッフが並べ直したりしている。ヨーロッパの100円ショップでは、決してそんなことはない。100円ショップなら100円ショップなりの買い物体験しか得られない。良い接客を受けるには、ハイエンドなお店に行くしかない。価格なりのものだけを提供するのがヨーロッパの企業」。

Some rights reserved by thinkretail Via Flickr

やっぱり、きれいなお店で買いたい……?!(Some rights reserved by thinkretail Via Flickr)

「でも、サステナビリティの面では、コストがかかっても日本の企業のこの姿勢を学ぶべき」とも。「すばらしい接客を受け、すてきなお買い物体験をして得た商品ならば、買ったほうも大切にしたくなる。ブランドへのロイヤリティも高まる。しかし、乱雑で整理されていない店で買ったものには『それなり』の扱いしかしない。愛着も湧かないしすぐ捨ててしまう。それがファストファッションを促す一つの要素になっている」。

ものづくりを重視する日本企業の特徴が、そのままエシカルの特徴になっているように感じる、とも。良い品質のものを長く愛用するという日本の消費者の心理とうまく合致しているのだと同氏は分析している。良いものをより良い方法で作るというのが、透明性にもつながり、消費者行動にもつながっていると締めくくった。

TEXSTURE

Website:http://texsture.com/

連載「ヨーロッパのエシカルファッション」

ヨーロッパのエシカルファッションシーンはどうなっている? TEXSTUREのメンバーから月1レポート
http://www.fragmentsmag.com/series/texsture/

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