IT業界との二足わらじ オーガニック農業で充実のライフワークを実現できた理由とは? 「Go Organics JAPAN」 田中美穂さん

A Picture of $name 奥田 景子 2017. 9. 22

オーガニック農業に関連した仕事に転職したいと思っていても、EU諸国に比べて無農薬や有機栽培農地が少ない日本では、まだまだ選択肢が少ないかも……。

仕事に迷いや悩みはつきものですが、実際に働く人のお話しを知ることで、勇気をもらえたり、次のアクションにつながるかもしれません。

タイ、香港、日本に拠点を構える「Go Organics JAPAN(ゴーオーガニクスジャパン)」代表の田中美穂さんは、IT業界と農業の二足わらじで活躍中。オーガニックの現場で働く先輩は、どんな働き方をしているのでしょうか。

田中美穂(たなか・みほ)
Go Organics JAPAN代表。東京にてIT業界に長年従事。ライフスタイルを見直し、Go Organics(本社:タイ・バンコク)の日本法人、Go Organics Japanを2015年5月に福岡県糸島市にて起業。糸島を中心とした有機農家の思いとともに、農産物を国内だけでなく海外へ向けての拡大を目指す。

Go Organics JAPANは、主にアジアでオーガニック農家の支援やオーガニック商品の開発などの活動をしている組織。プロデュースされた数々のプロダクトは、多様なライフスタイルになじむ、シンプルなデザインが特徴です。

中でも『二丈紅白米』は、世界のデザイン賞iF Design Awards 2017にノミネートされ、その魅力は広く認められています。

二丈紅白米 桐箱入り〈¥7,800+税〉(提供:Go Organics Japan)

震災で見つけた自分のライフワーク

Go Organics JAPANの代表を務める田中さんは、外資のIT企業に勤めていた人。25歳のとき、結婚を機に上京。旅行で話す程度の英語力だったものの、外資系のIT企業の正社員になり、以降ずっとIT企業でキャリアを積んできました。

ずっとIT関連の仕事を続けるつもりでしたが、30代の2011年3月11日東日本大震災がきっかけで、働き方を見直すようになったといいます。

本当は震災以前から、数字に追われるマネージャー職がしんどくなっていたんです。なにもなければ会社を辞めなかったと思うのですが、震災が起きたことで、仕事や働き方を変えたいと強く思うようになりました。

40代、50代と、これから先も続いていく人生を考え、なにか自然や人に関わる新しい仕事がしたい、と思いはじめたそう。

ITの仕事は作っては壊しの繰り返しなんです。新しいものを追求するのは、すばらしいと思う一方、『いったいなにが残せるんだろう?』と、疑問を感じてもいたんです。『じゃあ、自分にはなにができるんだろう』、と考えるうちに、『環境』と、『どんな人と過ごしたいのか』というキーワードにいきついたんです。

GO Organics JAPANが農園で開催するイベントは、ブドウの食べ比べやしっかりした歯触りのレタスと豚のしゃぶしゃぶを食べる会など、魅力的なものばかり!

新しい視点で物事を見つめるようになると、新しい出会いが巡ってくるというもの。

2012年、タイ在住の香港人であり、オーガニック食品の会社に勤めるスペンサーさんと出会い、いつか一緒に仕事をやりたいですね、という話になったそう。

半年に1回程度、タイに通いながら、交流を深めるうち、「自然と共生し、安心しておいしく食べられるものや、体や心の健康に繋がるものを広めたい、みんながハッピーに過ごせるような社会にしたい」という、スペンサーさんの思いに深く共感していった田中さん。

2014年にスペンサーさんがGo Organicsを立ち上げると、田中さんも退職し、2015年に福岡の糸島市を拠点にGo Organics JAPANを立ち上げます。

Go Organics JAPANの商品を扱う福岡の複合施設・博多リバレインモール地下2階の「九州マルシェ」でパチリ。(提供:Go Organics JAPAN)

オーガニックや農業の知識がない中、不安や迷いもあったと振り返る田中さん。福岡の家賃、食べ物、生活費などを下調べし、これならやっていけそうと確信しての起業でした。

いまでも屋号を2つ持っているんです。私の中の位置づけですが、生活の基盤になる“ライスワーク”は、IT関連の仕事。長きにわたり一生やり続ける“ライフワーク”に、「Go Organics JAPAN」の仕事があります。

GO Organics JAPANの取り組み

現在田中さんは、野菜の販売からイベント主催、ボランティアツアーの実施まで、多岐にわたる取り組みを実施しています。

イベントでもエディブルフラワーや野菜などを販売。(提供:GO Organics JAPAN)

中でも特筆すべきは農家さんとの商品開発。訪問して話す、通う、作業させてもらう……と、徐々に付き合いを深めながら進めているそう。打ち解けてくれた農家さんが、話してくれたことをくみ取り、形にしていく、という丁寧なコラボレーションで進めています。

たとえば、卯農園さんと商品化した『生姜シロップ』は、水は一滴も使わず、無農薬・無化学肥料で栽培された生姜ときび砂糖だけでできているもの。また『生姜ジャム』は、低速ジューサーで粗く絞り、きび砂糖を加えるだけという、どちらも卯農園さんのこだわりのレシピから生まれました。

(中央)卯農園さんの無農薬生姜ジャム〈¥750+税〉、卯農園さんの無農薬生姜シロップ〈¥700+税〉(筆者撮影)

こうした農家さんのアイディアを、Go Organics JAPANが目を引くパッケージデザインにまとめ上げます。

大分で無農薬栽培されている300枚以上のバラの花びらが入ったバラのジャムは、キッチンに飾っておきたくなるような雰囲気。

無農薬のバラジャム(淡紅)45g 〈¥3,700+税〉(提供:Go Organics Japan)

私たちの活動理念は、【農家さんがやれないことをやる】です。自分たちのやりたいことを農家さんにやってもらうのではありません。農家さんがやりたいことをサポートすることに価値があると思っています。

今後は、商品化のサポート体制をさらに充実させ、輸出入に力を入れ、世界共通の第三者認証のマークを作ることにも挑戦していく予定だと、田中さんは話します。

(左)高橋農園さんの干しブドウ〈¥1,300+税〉、(右)高橋農園さんの無農薬パクチーパウダー 30g〈¥1,700+税〉(いずれも筆者撮影)

30代、自分の強みを作ることで広がる仕事

今年の春からは、平日は東京でIT関連の仕事をして、土日に福岡でGo Organicsの仕事やワークショップを開催するという二足わらじの生活。それが良い生活リズムを作っているといいます。

私の場合、力は分散しますが、帰ってきて土や植物に触れてリフレッシュすると、東京でまた頑張る力が湧いてきます。バランスが良くて楽しいです。

農家さんと消費者をつなぐツアーの様子。(提供:GO Organics JAPAN)

自分らしいチャレンジにライフスタイル。それを実現できた理由について、自分の強みを作るために、30代の間に思い切り一つのことに集中して働いたからだと、田中さんは言います。

幅広い業務を一人でこなすいまを支えるのは、その「強み」。

管理職の経験で身につけた、販売戦略や立案、コミュニケーションとリーダーシップ。そして、幅広く使えるソフトウエアのスキルは、集中して働いたからこそ自分のものになったと思います。

仕事に「強み」を持つことで、40代での働き方の可能性が広がりました。

決して作って終わりではない、未来に続いていく仕事をしたい……。ライスワークで身につけた“強み”という知識と経験が、ライフワークを実現し、日々をイキイキと過ごす田中さんの横顔は、眩しく輝いていました。

Go Organics JAPAN

【website】http://goorganics.jp/

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