【連載】アーヤ藍の旅の『芽』【全6回】

町中が畑! わずかでも隙間があれば植物を植えるエディブル・ガーデンの町 〜英・Todmorden

A Picture of $name アーヤ藍 2016. 11. 18

先月までは弊社ユナイテッドピープルの取り組みについて、半年にわたってつづってきましたが、今月からは、アーヤ個人の「旅」を通じた発見をお届けしてまいりたいと思います。

初回の今月は、昨年春に訪れたイギリス中部の小さな町・Todmorden(トッドモーデン)のお話です。

Todmordenは、人口約1万5千人の小さな小さな田舎町。数年前までこの町は、周辺のほかの町となにも変わらない場所でした。それがいまでは、世界各地から季節を問わず、訪問客が絶えません。その理由とは?

歴史を感じる石造りの低い建物が並ぶ、ゆったりとした小さな町です。絵本に出てきそうな場所。

歴史を感じる石造りの低い建物が並ぶ、ゆったりとした小さな町です。絵本に出てきそうな場所。

Todmordenが人を集める理由……それは、この町が取り組んでいる「エディブル・ガーデン(Edible garden)」の取り組みにあります。

直訳するなら「食べられる庭」ですが、町中のスペースを活用して、食べられる野菜(Edible vegetables)を植えているのです。

「野菜って、育てるのたいへんでは?!」と驚かれるかもしれませんが、「野菜」といってもその種類はさまざま。Todmordenでは、主にハーブ系の野菜が植えられていました。

町の道路脇にかかっていた看板。この近くでは、ラズベリー、ルバーブ、ローズマリー、フェンネル、セージなどが育てられているようです。

町の道路脇にかかっていた看板。この近くでは、ラズベリー、ルバーブ、ローズマリー、フェンネル、セージなどが育てられているようです。

「Tea Garden」の小さなプレートが。どうやらここは、お茶にできるハーブが育てられているよう!

「Tea Garden」の小さなプレートが。どうやらここは、お茶にできるハーブが育てられているようです!

どこで育てられているかというと、細長いプランターを駆使して店頭のスペースであったり、

中にはわずか10cmほどの幅のプランターもありました!

中にはわずか10cmほどの幅のプランターもありました!

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河川敷はもちろん、

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駐車場の脇のスペースや、道路沿いにも、

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さらには、警察署の前にもありました!

写真左側に「Police」の看板が見えます。

写真左側に「Police」の看板が見えます。

とにかく、「わずかでも隙間があれば植えてしまおう!」という情熱を、町を歩きながら感じるくらい、あらゆる場所がエディブル・ガーデンになっていました。

そんなTodmordenですが、数年前までは、親世代の人たちが自分で料理をほとんどせず、冷凍食品などをレンジで温めて食べるばかりだったといいます。子どもたちは、卵がどこからくるのかも知らなかったくらいだと。また、町には農業に向くような土地がほぼなかったそうです。

しかしだからこそ、身近にある土地で、手軽に育てられる植物を植えはじめたのです。

さらにユニークなのは、このエディブル・ガーデンで育てられた野菜は、全て「Public(公)」のもの。誰でも好きに収穫してOKなのです。

警察署の前のスペース、アーティチョークが立派に育っていました! ちなみに、いくら「シェア」と言われても、公の場所から採っていくのには抵抗がある人も多かったとのこと。特に、警察署の前の野菜は……(笑)。

警察署の前のスペース、アーティチョークが立派に育っていました! ちなみに、いくら「シェア」と言われても、公の場所から採っていくのには抵抗がある人も多かったとのこと。特に、警察署の前の野菜は……(笑)。

そんな“地産地消”の植物を植える中で、地域の子どもたちにも参加してもらったり、収穫できた野菜で一緒に料理をしたりしているそう。そうして、地域内外の人とのコミュニケーションが増えるだけでなく、新たなビジネスも生まれているなど、さまざまな視点からプラスの循環が生まれています。

Todmorden随一のマーケットには、この地域で作られたものを使った食べものがたくさん売られていました。ここのチーズもTodmordenで作られたものだそうです。

Todmorden随一のマーケットには、この地域で作られたものを使った食べものがたくさん売られていました。ここのチーズもTodmordenで作られたものだそうです。

いまでは野菜だけでなく、精肉も地産を進めているとのこと。精肉店でも、どこからきたお肉なのか、説明が書かれています。

いまでは野菜だけでなく、精肉も地産を進めているとのこと。精肉店でも、どこからきたお肉なのか、説明が書かれています。


“Totally Locally”(完全に地域に根ざして)という取り組みがあるようです。田舎町の小さなお店で、これだけメッセージ発信をしているのもすごい!

“Totally Locally”(完全に地域に根ざして)という取り組みがあるようです。田舎町の小さなお店で、これだけメッセージ発信をしているのもすごい!

ガイドをしてくれたエステルさんは、旦那さんともども、ロンドン生まれロンドン育ち。10年ほど前までロンドンで暮らしていたものの、あまりに忙し過ぎる生活に嫌気が差し、Todmordenに引っ越してきたそうです。「Todmordenでの暮らしは最高よ!」とエステルさんは話します。

ロンドンでは、街中で誰かと話すことなんてなかった。Todmordenに来たら、通りですれ違った人たちと会話をする。大きな家族ができたみたい。いま70歳だけど、なにかあったとしても、すぐに誰かが必ず気づいてくれる。

実際に、一緒に町を歩いている間にも、すれ違った人たちと会話を交わしていました。

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エディブル・ガーデンの取り組みは、食の問題に対する取り組みのようでありながら、環境問題や子どもの教育問題にも関わり、さらには地域のコミュニティ形成や、地域振興にもつながっています。一見小さな活動に見えて、実はとても大きなチャレンジなのではないかと思います。

ちなみに、Todmordenから始まったエディブル・ガーデンの取り組み、その名も「Incredible Edible Todmorden(インクレディブル・エディブル・トッドモーデン)」は、「If you eat you’re in.(食事をする人は誰もが参加者)」という方針。いまでは、世界各国に広がってきています。

2017年1月21日(土)から、エディブル・ガーデンと同じように、「食」から広がる楽しくおもしろい未来の可能性を探るドキュメンタリー『0円キッチン』が、アップリンク渋谷などで公開となります。

同作は、監督のダーヴィド・グロスがヨーロッパ5カ国を旅しながら、スーパーや一般家庭から捨てられている食べものをおいしい料理に大変身させたり、身近に隠れている食材を再発見したり、子どもたちと昆虫食を作ってみたり……と、さまざまな実験を重ねていくエンターテイメント・ムービーです。ぜひこちらもご覧になってみてください!

映画『0円キッチン』

【Website】http://unitedpeople.jp/wastecooking/

監督ダーヴィド・グロス氏来日のための費用をクラウドファンディング中!

映画『0円キッチン』の監督であり、フードロスを減らすアクティビスト(自称:食材救出人)でもあるダーヴィド・グロス氏の来日を実現したい! と、チャレンジ中のクラウドファンディング。集まった費用は、来日にかかる費用と、映画『0円キッチン』をより多くの人に届けるための配給費用の一部を集めるために使われます。ぜひ一度チェックしてみて!
https://motion-gallery.net/projects/zerokitchen

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