「We Are Islanders」に聞く 島国・アイルランドでしかできないものづくり

Photography Courtesy of We Are Islanders 2015. 12. 19

「We Are Islanders(ウィー・アー・アイランダーズ)」のニットは、アイルランド・ドニゴール州に受け継がれる伝統的な毛糸を、地域の熟練職人である女性たちが手仕事で仕上げている。

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アイルランド最果ての州であるドニゴール州は、ゲール語をいまも日常的に話す人々の住む人々が住まい、古くからのアイルランドの伝統が色濃く残っている。例えばドニゴール・ツィードはいまも名高い地場産業。また、世界的に大ヒットしたENYAを含む数々のミュージシャンを数多く生み出している地域でもある。――そんなニットのみならず、「We Are Islanders」はアイルランド生産にこだわり、同国の伝統と技術をいまへと受け継いでいる。

日本と同じ島国であるアイルランドとはどんな国なのか。同ブランドのクリエイティブディレクター・Rosie O’Reillyに、アイルランドが育んだデザイン・フィロソフィーを尋ねた。

―― なかなか日本からは遠い国です。まずアイルランド、そして「We Are Islanders」が拠点を構えるダブリンとはどんな場所なのでしょう?
ダブリンは、まるで大きくて温かい自宅のような場所。必ずどこかに、または誰かが、家にいるときのようにくつろいだ気持ちにさせてくれます。家というのは不思議なもので、出ていってもいいけど、帰ってもまた嬉しい。
アイルランドの人々が、アイルランドという場所についてそんな思いを抱いているのは、海を旅する民族であった歴史が長かったからではないでしょうか。

日曜日。ダブリンから眺める海。(Twitterから)

日曜日。ダブリンから眺める海。(Twitterから)

もしアイルランド、またはダブリンに来たときにぜひ体験していただきたいことは3つあります。
①ダブリンのビーチで泳いでみてください。アイルランドの海は美しく、あまりに美しいので、アイルランドの人々は凍えるような冷たさの水に飛び込むのも大好きです。
②言語。音楽にせよ文学にせよ、いまに続く過去を感じられるでしょう。
③伝統工芸品。特にオススメするのは、Joe Hoganのバスケットづくりを見てみてください。

自然と文化は深いつながりがあり、それゆえ独自の文化が生まれます。島国で生き抜くうえで必要なのは忍耐力。それがために、シンプルな中にも強いメッセージが見えるデザインが生まれたのだと思います。例えば、テキスタイルや木舟ですね。

―― 海というのは、一つ「We Are Islanders」のキーワードになっていると感じます。ブランド名は、島国というところから来ているのですか?
そうですね。私たちの「Tidal」というコレクションは、ダブリンの沿岸、海の潮の流れで染めたコレクションです。染めの仕上がりは、一つとして同じにならないユニークなコレクションになりました。

でも私たちはみな地球という島の上にいっしょに住んでいる、という前提があるのです。この地球という島が迎える危機に、乗船員である私たちは注意を払わねばなりません。残念ながらいまの時代、私たちの意識は「自分」に向かっています。環境問題や社会問題 ――その結果被るものは明らかです。

例えば島国のアイルランドは、海面水位が上がれば土地が海に飲み込まれてしまいます。そこで、2013年には、潮の満ち引きを通じて海面上昇を体感するインスタレーションプロジェクト「4/704」を行いました。

―― アイルランドの伝統技術を受け継いでいくというのもコンセプトですが、現状を教えてください。
アイルランドの服飾産業が空洞化しておよそ15〜20年が経ちます。それが近年になって、再び国内で生産しようという動きが見られます。アイリッシュデザインは、古臭いものとしてではなく、メインストリームとして復活しつつあります。

―― 国内生産にこだわっています。国内生産の良いところは?
生産に必要なリードタイムをコントロールしやすいところでしょうか。あと、一着限りのアイテムを作るのもやりやすいです。もちろん、輸送にかかる環境負荷も小さいですしね。

―― アイルランド産の素材、しかも環境にやさしい素材を積極的に使っています。
ウェックスフォード(※アイルランド島南東)のリネン、ティペラリー(※アイルランド南部)のウール生地、バンブーシルクにサーモンレザー……私たちが使用するテキスタイルは、ほとんどアイルランドで生産されたものです。産業を守り、いまの社会と文化をより豊かなものにできればと思っています。残念ながらウールについては、アイルランドで織ったものですが、原料自体は輸入されたものです。しかしこれもなんとかアイルランド産のウールに変えられるよう模索しているところです。

―― ブランドの次なる動きは?
2016年の秋冬コレクションです。トランス・シーズナル……つまり季節関係なく着られる服というのを、本気で考えました。気候変動は私たちの島国のみならず、どの地理的特徴を持つ国にとっても深刻な問題。新しいファッションのビジネスサイクルを模索することは、より良い未来を作るうえで重要だと思っています。

―― 最後に一言?
昨年2014年に、日本を訪ねてすっかり恋に落ちました。日本のデザインは、私の美意識にとても大きな影響を与えました。侘び寂びについてたくさん本も読みましたが、アイルランドの伝統工芸にも通ずる考えだと思いました。ぜひまた訪ねたいです。

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