「アメリカ」という言葉の持つ意味〜「ReciclaGEM」

A Picture of $name Shiho Hasegawa 2013. 11. 25

2010年にニューヨークで独自のブランドを立ち上げた「ReciclaGEM(レシクラジェム)」デザイナーのTamara Leacock(タマラ・リーコック)さん。

「Recicla(※リサイクルの意)」というポルトガル語の単語をブランド名に冠したのは、彼女のルーツとなったブラジルの言語を使いたかったからと話します。そのブランド名のとおり、彼女は不要になってしまった洋服や生地からアーティスティックなファッションを生み出していますが、同時に北・中・南含めたアメリカ大陸が溢れんばかりに持つ多様性への強い思いが込められています。

多様性の都市・ニューヨークで活動する彼女がファッションを通して表現したいことや、彼女のルーツとなる「バックグラウンド」について尋ねました。

写真中央Tamara Leacockさん。Fair Fashion Runway 3rd edition後の一枚(Photo by Stephen Elliot)

写真中央Tamara Leacockさん。Fair Fashion Runway 3rd edition後の一枚(Photo by Stephen Elliot)

「アメリカ」への思い

―― ブランドを立ち上げたきっかけは何ですか?
高校生のとき、私の祖父がブラジル人であると初めて知りました。自分のルーツがブラジルにもあることが嬉しくてクラスメイトにそのことを話したら、ブラジルがどんなものか分からなかったんでしょうね、全く信じてもらえなかったんです。そこでブラジルとは何か、そして私の中にあるブラジルのバックグラウンドを、ファッションを通じてクラスメイトに見てもらおうと作ったのが最初のコレクションです。リサーチをする中で、ブラジルは多様性溢れる国で、アフリカンアメリカンも数多く含まれているということを知りました。

高校卒業後はイエール大学に進学し、ソーシャルチェンジと多様性を表現できる場を作るべく「Sankofa(サンコファ)」というファッションショーを行う団体を設立しました。以来、ファッションと社会的公正の融合の必要性を強く感じ、自分自身のブランドを持ちたいと思うようになりました。卒業後は小売企業に勤めていたのですが、どうしてもファッションへの思いが捨てきれず、自分のブランドを立ち上げることを決意しました。現在はニューヨーク大学の修士課程に在籍しながら、コレクションを作っています。

―― 「多様性」というのがキーワードになっているようですが、その点について詳しく聞かせてください。
ブランドの立ち上げを準備しているとき、資金調達イベントでメキシコ出身の女性と出会いました。私たちは政治について話していたのですが、私は「America(アメリカ)」という単語を、「the United States(アメリカ合衆国)」という意味で使っていたのです。そうしたら彼女は「ちょっと待って!『America』というのはメキシコでもありブラジルでもあり、アメリカ大陸全てを含めた名称なのよ!」と言ったのです。それは、私にとって一つ世界が開けた瞬間でしたね。「America」は、私が思うよりずっとずっと広くて深いものだったのです。そこで私は自分のブランドを真の「America」ブランドにしたいと強く感じました。

アメリカはすばらしい多様性のある「大陸」ということを伝えていきたいと思っています。今のアメリカは複雑な歴史のうえに成り立っていますが、言語も文化も環境も、実にさまざまなものが混じり合うことで常に発展しています。移民問題など、メディアは悪い面ばかりを取り上げるけれども、逆に良いこともたくさんあるし良い人たちもたくさんいます。私もあなたも含めてね。だからさまざまな人と話し協力しながらブランドを作っていきたいと思っています。ニューヨークはアメリカの中でも最も多様性がひしめき合い、輝いている街です。その街だからこそ、この多様性を取り込み発信していけると思っています。

(左)Photo by Anna Kuzmina、(右)Photo by Kat Soutar

(左)Photo by Anna Kuzmina、(右)Photo by Kat Soutar

―― ウェブサイトに「ReciclaGEM」はファッションブランドであると同時に学問であり、ムーブメントである」とありますが、それはどのような意味なのでしょうか?
「ReciclaGEM」は、ファッションを通じて社会的なメッセージを届け、変革を促していくことを目指すものです。「学問」というのは、それがいかにして可能なのか? またファッションがいかに社会に影響を与え、変化をもたらしてきたのか、「ReciclaGEM」を通じてリサーチになっているという意味です。その一部はブログで公開していて、私のことだけではなく他のエシカルファッションに関わる人たちについても書いています。現在、ニューヨーク大学ではこの研究をしていて、卒業制作もこのテーマで書いていくつもりなので「学問」とはその意味もあります。

「ムーブメント」とは、それによってもたらされるポジティブな変革のこと。政治的なメッセージを表現しているデザイナーやアーティストたちとコラボレーションすることも含めて、大きな意味でさまざまな社会的活動に参加するということです。「ReciclaGEM」のデザインも、社会/政治運動、公衆衛生問題からインスピレーションをもらうことが多いですし、前回のコレクションではそれはメキシコでの政治運動からインスピレーションを受けました。

アレクサンダー・マックイーンは政治的・社会的問題を提起するプラットフォームとしてランウェイを使っているところがすばらしいですし、マルタン・マルジェラやコム・デ・ギャルソンの川久保玲も社会的なメッセージを、ファッションとして伝えています。彼らが社会にもたらしてきたものも「学問」すべき「ムーブメント」だと思っていますし、インスピレーションを受けますね。

Fair Fashion Runway 3rd Edition ReciclaGEM Spring2014にて。Photos by Suzanna Finley

Fair Fashion Runway 3rd Edition ReciclaGEM Spring2014にて。Photos by Suzanna Finley

エシカルであるワケ

―― それでは、エシカルなファッションブランドにしようと思ったきっかけは何ですか?
もともと友人たちがたくさんの洋服買い、すぐに捨てようとしていたことがすごく気になっていましたし、彼らがアメリカについて「大量消費社会」「環境への配慮に欠ける国」というイメージを持っているのが気になっていました。そのようなイメージを変えるためにも、アメリカのファッションブランドはもっとエシカルになるべきだと強く感じています。

私は「ゼロ・ウェイストポリシー(※生地の廃棄を全く出さないこと)」をその言葉を知る前から実行していました。環境問題に興味があって自分で調べたりしていて、ゴミを出す影響に自然と気づいていたのだと思います。そんな思いを持っていたので、ブランドを始めるときに友人たちのいらない服を新しい洋服に生まれ変わらせようと思って、洋服をどんどんもらうことにしました。すると、アパートがすぐに洋服で溢れてしまって、足の踏み場もなくなったしまったんです! 素材が手に入ったのはうれしかったけど、その量はとにかくすごかったですよ(笑)。「アメリカ」を伝え、「アメリカ」のイメージを変えていくために、エシカルは自然な選択肢だったといえます。

―― 素材はどのように調達していますか?
リサイクル素材を使うことはとても大事な基準で、友人から不要になった洋服をもらっています。また、再生可能で生物分解性もあり耐久性もあるので、麻をよく使っているのですが、「Hemp Traders」や「Enviro Textiles」といったウェブサイトをよく利用しています。

麻以外にもサステイナブルでもっとラグジュアリーに見える素材を常に探しているところですが、自分の決めた基準をクリアする素材を選ぶのにはすごく時間がかかります。まず自分で調べ、必ずその後ファッション工科大学の教授や他のエシカルファッションブランドのデザイナーに意見を求めて「ダブルチェック」をしています。シルクを使いたいと考えているのですが、通常シルクは生きた蚕を殺して作られているので、ヴィーガンの私は使うことができません。新しくできたウェブサイト「Offset Warehouse」で扱っているピースシルクに興味を持っていて、みんなに意見を聞いているところです。

デジタルプリントをしたいときには、「Spoonflower.com」を利用します。インクジェットは水の使用量が少なくて済むのですばらしいと思います。エコ、エシカル、サステイナビリティーという3つの要素が組み合わさっているのが「ReciclaGEM」だと思うので、素材を選ぶときは、エコであるかの他にフェアな価格であることも気をつけています。

(左)Tamaraさんとコレクション、(中央)使わなくなったベッドシーツからつくったドレス、(右)

(左)Tamaraさんとコレクション、(中央)使わなくなったベッドシーツからつくったドレス、(右)左側はリサイクルの麻と綿を使用したドレス、右側には手作りのワイヤーワークとパリで学んだ絞り染めテクニックを使ったストール

ファッションでメッセージを届けていく

―― 今までにどんな困難に直面しましたか?
金銭的な問題はもちろんですが、1人で全てを切り盛りしていくのはとてもたいへんですね。大学ではたくさんの課題が出されるし、難しいテクニックを使って服を作ろうとすると時間がかかってしまい、デザインすることに時間がかけられず、2012年の12月頃までは力や時間のかけ方に悩んでいました。でも今シーズンに入ってからは、そのバランスをうまくとれるようになったと思います。自分の中で「私は本当にファッションがやりたいんだ」という思いが強くなり、自由な気持ちと自信を持つことができるようになったからだと思います。

―― 最後に、今後の目標を教えて下さい。
私の目標は素敵なグローバルファッションブランドをつくることです。美しくて前進的で正直で、そしてラグジュアリーなデザインのファッションを通じて環境や社会に対して意識を高めていけるようにしたいです。その一つの手段として、アーティスティックなコラボレーションも行っていきたいと思っています。

例えば、次のコレクションは「コラージュ」をテーマに考えています。ジャン=ミシェル・バスキアなどのアーティストたちからインスピレーションを受けたのですが、彼らはコラージュを通じて社会や文化を表現しており、力強いメディアだと思って取り入れました。それからオーストラリアの写真家とのコラボレーションも計画しています。まだ話し合いの段階ですが、ウィメンズ・ヒストリー・マンス(※年に一度行われる、女性の貢献を讃えるイベント)に向けて、フェミニズムや女性のスーパーヒーローというテーマでプロジェクトを仕上げていく予定です。来年の2月24日には「NYU gallatin fashion show」というグループデザイナーショーを行う予定ですが、現在ニューヨークで新しくブランドを立ち上げるデザイナーには、環境や社会的な問題に目を向けている人がとても多いと感じますね。

ファッションがいかにしてメッセージを運ぶ手段となりうるのか、日本のみなさんとも意見を交わしたいと思っています。震災の後に「エシカルであること」への意識が高まっているかもしれません。私はそんな魂のニーズも汲み取っていきたいと思っています。もし何かあればメールを私に送っていただけたらうれしいです!

ReciclaGEM

Website: http://reciclagemstyle.blogspot.com
現在はカスタムオーダーのみの生産ですが、もうすぐオンラインショップがオープンするそう! カスタムオーダーは日本からも利用可能。気になるものがあればメールにて問い合わせ。
Email: info@reciclagem-themovement.com

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